ツバサのセカイお礼小説
□幸せの翼
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見上げれば、赤と青の混じる空。
その間は茜になったり、色付いた雲が邪魔したり。
色付かずに残る白も夕日の赤に傷つけられる。
ずっとその絵を眺めていると、暖かいような冷たい風が髪を絡めて視界を乱した。
風の道が薄れた後は、未だ生かされる筈の青い葉が舞い降りて、隠れる様に草に消えた。
それを目で追っていた時、不意に近くの野花に視点を取られた。
その花も先程の風に削られたのか、小さな花弁は欠けている。
「今の風、強かったねー」
川のせせらぎが聞こえる木の下で、隣に座るサクラに問うファイ。
サクラは乱された髪を直しながら、はいと答えて笑顔を返した。
「ファイー、退屈になってきちゃったー」
ファイの肩で白くて長い耳を垂れているモコナは、浅瀬の隣で剣を振り続けている男二人を見下ろした。
ファイは気落ちしているモコナを肩から下ろして腕に抱き、もう少しだからと頭を撫でた。
「小狼君ってー、上達するの早いよね?」
「だって小狼、毎日殺陣の練習ばっかりしてて…」
「全然構ってくれないんですー…って?」
「そうなんです。小狼、わたしより殺陣の方が大事みたい!」
「んー、それは違うと思うなぁ」
「どうしてですか?」
「小狼君ってー、物語の中の自分の事を凄く大切にしてると思わない?」
「…そうですね」
「それってね、物語の中のサクラちゃんを想う小狼君を大切にしてるって事だよ?」
「えっと…、あんまりよく分からないんですけど…」
「つまり、小狼君は強くなっていく設定だから、自分も殺陣を上手くなっていかないと…って考えてると思うんだー。それは、小狼君のためと、サクラちゃんのためでもあるんじゃない?」
「現実でもですか?」
「もちろん!…ヒロインの顔を潰しちゃいけないしね」
「そうだったのね…。じゃあ…わたしも小狼のためと自分のために、役作り頑張らなくちゃ!」
「モコナも頑張る!」
「うん、頑張ってー」
「ファイもだよ?」
「…もちろんねー」
そしてまた風が吹く。先の風より少し冷たく、通り過ぎるのも速かった。