ツバサのセカイお礼小説
□血まみれ紅月
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アカい月
それは人のココロを
狂わせる
赤にソマレと
誘われる
そしてこのヨは
紅いツキ
紅い月。
それは人の心を和ませる。
赤に笑えと誘われる。
そしてこの夜は赤い月。
寝静まった街を抜け、灯りの届かない橋を渡ると、次は桜の並木道。
月明かりに染められて、散る桜の花びらが、妖しげに輝いて笑うとき、二人の影が浮彫りになる。
響く歩の音が一人の理由は、黒鋼に抱かれたファイのため。
先の撮影の最中に黒鋼に負わされた足の痛みは、軽いものではないらしい。
広い肩に項を垂れて、俯くファイのか細い息に静かに疑問を投げ掛けてみる。
「そんなに痛いんなら車拾った方が良かったんじゃねぇのか?」
「オレの勝手でしょー。それに場所も近いんだから」
「…それだけか?」
「バレてるの?やっぱり…」
「そんな事だろうと思ったぜ」
「だってー、せっかく黒様が抱っこしてくれてるんだからー♪」
細い項は垂れた儘でも、声色からきっと笑顔なんだろうと思われた。
「だったら、このまま俺の部屋まで連れてくから覚悟しとけよ」
「やぁだー♪」
「しっかり喜んでるじゃねぇか」
「あはは♪」
紅い月。
それは人の心を魅了する。
赤に祈れと誘われる。
そしてこの夜は赤い月。
ホテルに戻って部屋に向かうと、先に到着しているスタッフ達と出会した。
スタッフ達が負傷した俳優を気遣う事は当たり前。
それを当然のように断る二人。
慌ただしい空気を抜けて、静かな路を真っ直ぐ歩めば、目的の部屋にたどり着く。
黒鋼はファイを抱えた儘で、片手で鍵を操作した後、続いて戸を開いてみれば、一人でに緩い光が灯り走った。
奥に進んで広いベッドに、腕に居る彼を預けようとしたが、ファイがそれを拒もうとする。
「手ぇ離せ」
「いやー」
「後で直ぐ抱いてやるだろ?」
「それ意味が違うでしょー?」
「早く離せ!」
「いーや」
しつこいファイを黒鋼は力付くでベッドに沈めた。
「もう!」
「てめぇの力が弱ぇんだよ」
黒鋼の腕から離れたファイの、足の痛みは離れない。
寝かした彼の、少し横に腰掛けて、そっと髪を撫でてみれば、気持ち良さそうに目を閉じるファイ。
「猫かよ、てめぇは」
笑い混じりの声の答えは。
「だっておっきいにゃんこだもーん♪」