おとしたのーと。
□#12 寂しさが募る。
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「繋がれなかった…?契約、したのに?」
首を傾げるクロームちゃんに、私は素直に頷いた。骸の口調からも何となく理解していたけど、どうやらあの刃物で傷を作る“契約”とやらで骸と何らかの繋がりが出来るのが普通であり、私の様に繋がりが出来ないのはほとんど無い事である様だ。
「クロームちゃんは、“契約”したの?」
「契約は、してない…。けど、私は特別みたい。だから、契約してなくても骸様とお話出来る…」
「っ、」
返ってきた答えに、じわじわと胸が焼け付く様に痛み出す。
私よりも、出会って間も無い少女が彼と繋がっている。繋がりを求めて自らを傷付けたのに、私はそれを得られなかった。なのに、目の前の彼女はそんな事をしなくても彼と繋がっていると言う。
(醜い……嫉妬だ)
彼の“特別”な位置に、私じゃない彼女が居る。
それだけで、こんな感情が湧き上がるなんて、恋がこんなにも苦しい物だなんて、思ってもみなかった。
《………みゃあ》
「ーーっ、ありがとう、蒼」
私の歪んだ顔を見上げ、足元に擦り寄ってきた蒼。小さく鳴いた声は優しく、私を安心させる様だった。
「ごめん、クロームちゃん……。私、今日はもう、帰るね…」
「?……わかった」
嫉妬で何を言ってしまうか分からなくて、私は彼女に別れを告げた。
ーー次に会った時には、ちゃんと笑い掛けれる様に。
「………蒼、」
家に着くまで、蒼は黙って側に居てくれた。
門の前でしゃがんだ私の視線に、ゆっくりと目を合わせる。
「私……苦しいんだ。骸が居た証の残るあの空間で、独りぼっちで待ち続けなきゃいけないの。だから、しばらくは行けない…。ご飯は此処に来たらあげるから。だから………っ」
小さな温もりを抱き締める。
嫌がる素振りも見せず、鳴き声もあげずに私を受け入れてくれた。
「骸が帰って来たら、私を連れてってよ…っ」
ポロポロと溢れる涙。
他の人には会えるのに、私には会えない所に居る彼。
もう、他人の口から彼の話を聞くのは嫌だった。
「骸……っ、会いたい、よ……っ」
私の言葉に蒼はピクリと身体を震わせたけど、それ以上、トクトクと鳴る心臓と息をする度に上下する肩の動き以外は、私がその腕を解くまで動きを止めたままだった。
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