おとしたのーと。
□#12 寂しさが募る。
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「今………骸、って……」
少女の前で立ち止まっていた蒼が、振り返って私に向かって鳴いた。
「来い、って事…?」
《みゃあ》
私の言葉に同意する様に鳴いたので、私は蒼の隣まで歩みを進める。
それを確認した蒼が腰を下ろすのを見届けて、私は目の前の少女に顔を向けた。
「えっと…初めまして。私、紅坂緋露って言います。この子は蒼」
「私は…クローム。クローム髑髏」
互いに名乗り合った所で、次に何を話すべきか考える。さっき聞こえたのは聞き間違いかも知れないし…と少し考えていた所で彼女の方から声が掛かった。
「緋露…?骸様が、言ってた…」
「っ!?」
今度こそ、聞き間違いなんかじゃない。
さっきみたいに離れた所から聞こえた呟きじゃなく、今回は近くで、それも私に向けて放たれた言葉だ。
「骸の事、知ってるの?!」
「う、うん…」
勢いの余り迫ったら、彼女が丸い目をぱちくりと瞬いたので、慌てて距離を取る。
「ご、ごめんなさい…!」
「大丈夫…」
体制は変えず、ただ起こっている出来事を受け止めているだけに見える少女。
正直、此処までリアクションの薄い子を見たのは初めてだ。
「えーっと、クローム髑髏ちゃん…?」
「……クローム、で良い…」
「じゃあ、クロームちゃんね。クロームちゃんは骸と知り合い?」
「……うん。骸様は、恩人なの…」
彼女の話によると、死の瀬戸際に立たされ、親からも見放された彼女に手を差し伸べてくれたのが、骸だったという事だった。
「そう…。今はその傷は…?」
「もう平気…。骸様が、補ってくれてるから……」
「………よく、分からないのだけれど、大丈夫なら良かった」
ほっと一息ついた所で、クロームちゃんに尋ねる。
「骸が私の事を言ってたって事は、私より後にクロームちゃんは骸と会ったのよね?それっていつ位?」
「えっと……11日……」
「11日って…一週間前じゃない!」
骸とクロームちゃんが出会った時期から思いの外時間は経っていなくて、私は身を乗り出す。
「クロームちゃん、骸は今もイタリアに居るの?」
「うん…。でも、私が骸様に会ったのは、イタリアじゃない場所…」
「……そっか」
取り敢えず、骸の無事が分かって安堵した。だけど相変わらず会えない事に変わりは無くて。
「骸と連絡、取れたら良いのに…」
直接、彼自身の言葉を伝えて欲しい。
彼の声を聞きたい。
彼の顔を見たい。
もう一度、彼に触れたい。
我儘な欲は止まる事を知らなくて。
私はその中でも一番小さな物を口から零してしまっていた。
「緋露は、骸様と契約した…?」
「ええ。でも、私は繋がれなかったみたい」
彼の言う“契約”をすると、どうなるのかは分からない。けれど、あの時の骸の悲痛な表情を思い出して、私は胸が苦しくなった。
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