おとしたのーと。

□#10 君と過ごした記憶。
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「……いい人だったね、紅坂さん…」

「そうだな」



黒曜ランドからの帰り道。

俺とリボーンは、ゆっくりと来た道を歩きながら話をする。



「あの猫……蒼、だっけ?紅坂さんが居なかった時、一瞬右目が赤くなってたよな?」

「そうだな」

「骸と同じ、だった」

「……そうだな」


「ーーって、さっきからお前、同じ台詞ばっか言ってんなよ!!」


でも話と言ってもほとんど俺からの一方通行で、会話にはなってなかった。


「骸と緋露の状況を表してみたんだ。これで少しは奴の気持ちも分かっただろ」

「はあ?」


次にまともに返って来た返事は意味のよく分からない物で。俺はどういう意味かリボーンに問いただした。


「お前の予想通り、今の骸はあの猫に憑依してるんだろう。猫の状態で話せるのかどうかは分かんねーが…話せたとしても、緋露の前では無理だ。彼女は骸の能力の事を何も知らねーからな」

「う、うん…でも、それがどうしたって言うんだよ」

「骸は猫として彼女と居る間、彼女の言葉に返事が出来ない。出来るのは鳴き声を上げるだけだ。自分の言葉が相手に伝わらない。それがどれだけ辛いか分かるか?」


足を止めた俺を、リボーンが振り返る。その目は真っ直ぐに俺を捉えて、責め立てるかの様だった。


「惚れた女に安心させられる様な言葉を掛けられねーんだ。だからこそ俺に、彼女への伝言を頼んだんだろうな」

「…………ちょっと待って。惚れた女…?」


発せられた言葉をそのまま鵜呑みにしようとしたけれど、一箇所引っ掛かった。
惚れた、って誰が誰を…?


「そうだぞ。緋露に惚れてるんじゃなきゃ、あの骸がわざわざ猫のフリして一緒に居るなんて面倒な事する訳ねーだろ」

「そ、そりゃそうかも知れないけどさ…!」


あり得ない。あんな人を人として見ない様な人間が、誰かを好きになるなんて。


「おめーが見たのは、あくまで奴の一面に過ぎん。彼女に対する態度とお前に対する態度が違ってた事位、緋露と話してみて分かっただろ」


何でも無い様に言って、リボーンはその後の俺の反論を聞こうとはしなかった。







(でも、それじゃあ…)



好き同士で、一番近くに居るはずなのに。

すれ違う想いは報われないのか、と二人の事を思って胸が苦しくなった。







〜 Side Tsuna[end.]〜





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