おとしたのーと。

□#06 別離の前のひと時。
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初めて黒曜センターを訪れてからと言うもの、毎週末、私は骸達の所へ通うのが恒例となっていた。今日は平日だったが、珍しく彼から御誘いのメールがあったので学校帰りに此処へ立ち寄ったのだ。


「ねぇ骸、」

「何ですか?」


通い続けてひと月程経った今、私は一つの疑問が心の中でわだかまっていた。


「骸って、ちゃんと学校行ってるの?」


同じ学校に居るはずなのに、彼と廊下ですれ違った事は無い。自分が気付いていないだけかとも思ったが、骸の容姿は目立つから見逃すなんて事は無いだろう。


「そうですね…学校には行っていますよ。僕は生徒会の仕事が忙しいので、あまり授業には出て居ませんが」

「あれ?生徒会に入ってたんだっけ…?」


聴いた事が無かった。
生徒会の選挙の中に彼が居た憶えは無いし、本人から聞いた事も無い。

そういえば、彼は勉強が出来る様だったが、この前のテストで上位順位者が張り出された時も名前は見当たらなかった。


「そうですよ。日辻会長と僕以外はほとんど仕事をしないので、仕事の負担量が多いのが大変ですがね」


肩をすくめて笑う彼。
日辻会長が一人で仕事をしているのを見掛けた事はあるが、骸も彼と手分けして荒れた校舎を直すのに奔走しているのだろうか。

一時的に元の生徒会メンバーが集まって修繕活動をしていた様だが、それも先日元に戻ってしまったみたいだし。抑え付けられていたバネがストッパーを無くしたみたいに、以前にも増して不良達は荒れている。最近では、日辻先輩すら見掛ける事が無くなっていた。


「嗚呼そうだ。今日から金曜日まで…と言っても後三日程しかありませんが、放課後だけでも此処に来て頂けませんか?今週末から三人とも予定があるので、しばらく来て頂く事が叶わないのです」

「え?何処か出掛けるの?」


三人揃っての用事とは珍しい。
犬と千種が揃って出掛けるのは多かったが、骸はあまり出掛けないと言うのに。


「いえ、客が来るのです。週末はその為の準備をしなければなりませんし…」

「そっか…お客さんが来るなら仕方ないね」


流石に他の客が来る所にまで、お邪魔出来ない。猫の蒼に会う事以外、私には明確な訪問理由はほとんど無いのだから。


(…でも、残念だな)


蒼と遊ぶだけでなく、最近は骸達と話す事も楽しみの一つになっていたのに。


「緋露が来ても大丈夫になったら、また此方から連絡しますよ」


私が落ち込んでいたのが伝わったのだろう。骸はうつむき加減の私の頭に手を乗せて、そっと髪を撫でた。





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