おとしたのーと。

□#04 相反。
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基本的に週末は出掛けないのだと骸に聞いて、私は今週末もヘルシーランドに訪問する旨を伝えた。

その時に骸と携帯の連絡先を交換した私の電話帳には、家族以外に初めての男性の名前が表記される様になった。




「今日はお弁当も持って行こう」


前回訪問した際、彼らがあまり栄養の良い物を食べていない事を知った私は、作り慣れないながらも必死に料理した色とりどりの野菜やお肉を重箱に詰め、人数分のお握りと共に風呂敷に包んだ。


「よし、」


〜♪


丁度お弁当が完成した所で、携帯が鳴り響く。ディスプレイに表示された名前を見て、慌てて通話ボタンを押した。


「は、はい、骸?」

『慌てなくて良いですよ、緋露。それより今日は10時に来るんでしたよね?大丈夫そうですか?』


時計を見ると、短針は9と10の間、長針は9を過ぎた辺りを指していた。どうやら料理に集中して、時間を確認するのを忘れていたらしい。私の家から黒曜センターまでは歩いて20分は掛かる。それに、自転車は母が後で買い物に行く時に使うだろうから乗って行けない。確実に遅刻する時間だった。


「ご、ごめん!10分程遅れるかも…!」

「分かりました。10分位なら、気にしなくても大丈夫ですよ」


優しい声が耳に届くけれど、私は自分が遅刻するのが許せない。だから焦って仕度を再開した。風呂敷に包んだ重箱を、更に大きめの鞄の中に入れる。蒼にあげる猫用缶詰も押し込んで、玄関を開ける。


「慌てなくて良いと言っているでしょう。注意力散漫になって、君が事故に遭う方が心配だ。ゆっくり歩いて来なさい、良いですね?」

「、分かった」


通話の切れた携帯をポケットに押し込み、走りたい所を早歩き程度に抑えて目的地までの道を歩いた。





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