おとしたのーと。

□#03 あおいろ。
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「それにしても、早速いらっしゃったんですね」


コトリ。

六道さんが、私の目の前にコーヒーの入ったカップをソーサーと共に置く。
それに私は軽く会釈をして、彼が渡してくれた砂糖とミルクを溶かす。


「すみません…アポイントも取らずにいきなり来てしまって…。六道さんの住んでる場所は聞いていたのに、連絡先を聞くのを失念してました」


本来なら前もって何時に来るか、約束してから来るべきだっただろう。それでも笑顔で迎え入れてくれた六道さんは、嫌な顔ひとつしなかった。


「いえ、僕も場所だけ言って、ほとんど此処に居るから構わないだろうと思ってしまってましたから…おあいこ様ですよ」


優しく笑い掛ける彼に、少し緊張していた身体の力が抜けた。


「六道さんは…えっと、犬と千種と一緒に住んでるって聞いたんだけど、それって本当?」

「えぇ。彼らとは昔から共に行動していますからね。ーーそれにしても、僕が居ない間に彼らと名前を呼ぶ程に仲良くなったんですね」


不満そうな瞳が此方を覗く。


「あ、えっと…六道、さん?」

「僕の事は名前で呼んで戴けないのですか?」

「あ、ぅ…」


懇願するかの様なその言葉に、思わず声を詰まらせた。


「じゃあ、………骸君?」

「"君"は要りません」

「ぅ……む、むくろ、」

「はい」


私が呼んだ名前に満足したのか笑顔になった彼は、今日見た中で一番嬉しそうだ。

ーーこの顔は、反則だ。

整った顔は、笑顔になると正面から見て居られないほど格好良かった。



「あと、敬語も要りませんよ。






ーーー緋露」




今度こそ、火照った顔から火が吹き出るかと思ってしまった。





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