おとしたのーと。

□#00 ぶつかった彼女。
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それは、夕暮れ時になっても一向に涼しくならず、汗ばんだシャツが肌に張り付いて気持ちの悪い、夏のうだるような暑い日のことだった。



その時の僕は、犬と千種が買い物に先に帰った為、たまたま一人での下校途中で。

そんな時、暑さのせいで動きが鈍っていたのだろうか。後ろから下り坂を利用して加速した走りで駆け下りて来る少女を避け切れず、不覚にも振り返った状態で正面衝突をしてしまった。




ドンッ―――バララララ



「あっ、すみませんっっ!!」


すんでのところで踏み留まった僕の目の前で頭を下げた彼女は、衝撃でカバンから放り出されたノートや教科書などを、急いでカバンに詰め込んで行く。

茶色がかった黒髪に涼やかな瞳。少し大きすぎる眼鏡は、少々ずれかかっていた。
胸下あたりまでの長髪を肩上で一つに結って前に垂らしている彼女は、僕と同じ黒曜中の制服を着ている。


「あの……」

「すみませんでした!!じゃあ私、急いでるんで!!」


僕は何も言えず、先と同じように全速力で走っていく彼女の後ろ姿を見送った。






「あ…」


路面に1冊、さっきの彼女が詰め込み忘れたらしきノートが取り残されていた…





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