折れた翼は―

□標的14
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「この場所で、戦うんだね…」


小さく拳を握り締める輝羅。
夜の校舎の屋上に立つ彼女は呟く。
その視線の先には、通常なら開けられている筈の無い校門と、まだ見えていなくとも感じられる近付く幾つかの気配があった。







「厳正なる協議の結果、今宵のリング争奪戦の対戦カードが決まりました」

「第一戦は晴れの守護者同士の対決です」

「彼方を御覧下さい」


チェルベッロの示す方向を向けば、途端にライトアップされるステージ。
それは、さながら檻の中のボクシングリングと言った所だろうか。


「晴れの守護者の勝負の為に我々が用意した特設リングです」

「今回は晴れの守護者の特性を考慮したリングとしましたが、指輪争奪戦では各勝負毎に特別な戦闘エリアを設置致します」


酷く抑揚の無い、淡々とした声で紡がれる説明。それに対して対戦相手である沢田綱吉側は色々と煩く叫んでいたが、彼女達の言葉と比べるべくも無く内容の無い言葉のため聞き流し、此方は此方で話す事にした。
ーー敵一人から突き刺さる様に注がれる、私への視線は無理矢理意識の外へ追いやった。


「これ、一晩一晩の勝負で使い捨てにすんだろ?ケッコー金掛かってんね」

「でも勝負は見えてるんだ。無駄使いだよ」

「そう、かな…?ルッスーリア、気を付けてね?」

「あら、大丈夫よ輝羅ちゃん。私があんな中学生の坊やに負けると思う?」

「思わない、けど…」


言い切れぬ、何かが胸を渦巻く。
それは、少しでも目の前で仲間が傷付くかも知れない事への不安なのか、数日中に起こる大切な人達が傷つけ合う姿を見なければならない事への恐怖なのか。
今はただ、私に出来るのは仲間が傷付かない様に祈るだけだった。





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