letter for you...
□25通目
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翌朝、綱吉は余程薫の家に行く事を楽しみにしていたのか、目が覚めたのは目覚ましのアラームをセットした二時間も前、六時半頃だった。
それでもやはりと言うか、奈々やリボーンの方が起きるのは早かったけれども。
「えっと、筆記用具も宿題も入れたし、ノートも入れた。……他に持ってく物ってあったっけ?」
彼の気分の高揚の仕方は、宛ら遠足ーーいや、修学旅行に行く前の子供だ。
床に座って銃を磨いているリボーンから呆れた様な視線が向けられているのすら、気にならない様だった。
「行く前からそんなにソワソワしてると、早くから疲れちまうぞ」
「うん……分かってるんだけど、何もせずに待ってられなくて」
(……いや、寧ろ初デート前の人間、か)
身嗜みも整え、お気に入りの服を着て。
そういえば、綱吉が薫と二人の間で約束をして会うのはこれが初めてだと思い出す。
(強ち、そんな風な心理状況と見ても間違いは無さそうだな)
その後、二時間以上に渡ってそんな綱吉を相手にしなければならなかったリボーンがぐったりしてしまったのが、夏の暑さだけで無いのは火を見るよりも明らかだった。
*+*+*
「じゃあ、行って来ます!」
約束の時間の三十分は前から、一階のリビングで荷物を詰めた鞄を持って待機していた俺は、チャイムが鳴らされると同時に飛び出した。
「おはよう!田嶋さん」
「ああ、おはよう沢田」
玄関を開ければ、待ち望んだ姿が目に入る。
その顔は柔らかな笑みを湛えていて、昨日の電話を終える直前の「おやすみ」の一言を思い出して思わず身体の熱が上がった。
「い、行こう!田嶋さん!!」
「あっ、おい沢田!!」
きっと赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、いつもより速い速度で歩き出す。
(ああ…今日一日、俺の心臓は保つのかな…)
リボーンも居ない状態で自分の想いを抑え切れる自信が無くて、音を立てる胸を鎮める為に深く深く深呼吸をした。
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