letter for you...

□23通目
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8月に入り、一週間が経った。
終業式の後にあった夏休み中の部活は終わりを迎え、今日は卒部生達の送る会だ。
ーーとは言っても、三年生は部活を引退するだけであってまだ学校には居るし、二年生が居ない放送部は送り出す側が一年の私しか居ないので、実感も湧かなければ何をすべきなのかも分からない。
そのお陰で、送る会、とは名ばかりの騒ぐだけの集まりになっていた。


「田嶋、楽しんでるかー!?」

「っ、ええ、まあ…」


取り敢えず今は、騒がしい事大好きな部長の提案で、人生初のカラオケに来ていた。


「ゴメンなー田嶋。態々オレらに付き合わせちまって」

「全くよね。でも田嶋ちゃんが居てくれて良かった。私一人じゃこの男共の相手なんてやってらんないし」

「いえ…母で慣れてるので大丈夫です。……ノリに付いて行ける訳ではないですが」


三年生は部長を含め、男子二人、女子一人の三人。朝の放送はいつもこの三人で順番に回していたのだが、夏休みが明けた二学期からは私一人でしていかなればならない。


「あーあ、もうちょい田嶋とも話したりしたかったんだけどなー」

「そうねー。もう田嶋ちゃんとあんたらのお世話するのも最後なのかもねー」

「お、お世話って…」


しんみりしている先輩達に苦笑していると、少し離れた位置から声が掛かる。


「おーい、お前ら何沈んでんだよ!今日はとことん歌うって言ってただろ?」

「………歌ってんのは、ほぼあんただけだけどね」

「な、なんだと…っ?!」


大袈裟な身振りでショックを体現する部長に、笑みがこぼれる。彼の明るさのお陰で、いつも雰囲気の良かった部室。来年は彼らが居なくても、せめて普通に、悪い雰囲気などならず部活が出来たら良い。ーーまあ、後輩が入ってくれなければ、それすらも無いのだけれど。






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