letter for you...

□22通目
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「次、沢田」

「は、はい…!」


名前を呼ばれ、教卓へと向かう。
テスト返却の時のドキドキに、俺は未だに慣れる事が出来てない。いや、正確には今回いつに無い位勉強したからか、特に落ち着きが無かったのかも。


「まあ…健闘した事は認めよう。だが、残念ながら補習だ」


渡された解答用紙の右上。
点数が書かれた赤い字は、ギリギリで赤点を示す物だった。人間そう簡単に変われる物じゃないよな、と自嘲して俺は席に戻った。






*+*+*






「よっ!ツナ、一緒に帰ろうぜ!」

「あ、おい野球バカ!十代目は俺とお帰りになるんだ!テメーは引っ込んでろ!」

「あー。山本、獄寺君、三人で一緒に帰ろうか」

「おう!」

「十代目っ!?」


今日の授業は全てテストの返却と解説・復習に当てられ、毎時間返ってくるテストに気が滅入りそうだった。
けれど目の前の二人は、全然そんな姿には見えない。


「二人とも、テストどうだったの?」

「勿論、全部満点っスよ!」

「俺はいつも通り、赤点だらけだったのなー。ツナもじゃねーの?」

「んー。俺も赤点あったけど、前は5教科全部だったのが、今回は3教科だけだったよ」

「わっ、ズリーのな!」

「流石です十代目!」


獄寺君の言葉に「流石って何が?」と思わず訊きそうになっけど飲み込んだ。
多分、「山本に勝つのは当たり前っスね!」とか「前回より能力が上がったって事ですよね!」とかいった意味だろう。他意は無い、はず。


「一応勉強したんだけどさ、基礎が出来てなかったから、国英数の3教科が出来なくて…やっぱ補習からは逃れられなかったよ」


他のテストは暗記系ばかりだったから、点数は60点代とか今までに無い高得点を叩き出した。
これも手紙の彼女のお陰、なんだろう。






「あ、そうだ。二人とも、先に玄関行っててくれるかな?出来れば少しそこで待ってて貰えると助かるんだけど…」

「おう、良いぜ!」

「何かあるんスか?」

「うん。ちょっとね」


視界に映った影へと駆けて行く。
丁度、教室を出た所で彼女に声を掛けた。


「……田嶋さん!」

「ん?」


振り返るその背の後ろで、二つのお下げが揺れる。眼鏡の奥でパチパチと瞬きをする目を見て、俺は言った。


「今度、時間があったら少し勉強教えてくれないかな…?」


“彼女”から文面で言われた事だけど、リボーンと田嶋さんを二人きりにあまりしたくないなら、彼女と居る時間を増やせば良い。
それに俺自身、田嶋さんともう少し仲良くなりたかった。


「勉強を教えるのは良いが…それは夏休み中の話か?」

「えっと、うん…。ダメ、かな?」

「……時間がある時なら、大丈夫だ。7月中は難しいが、8月なら大丈夫だと思う」

「そっか、良かった」


ほっと一息吐く。
彼女独特の雰囲気なのか、断られるのではないかと妙に緊張していたのかも知れない。




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