letter for you...
□21通目
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「ーーでは、始め」
普段からは想像も出来ない程の静寂の中、教師の言葉が室内に響いた。
カリカリカリ
鉛筆やシャーペンの芯が紙の上を滑り、白を黒に変えて行く。
時折その筆跡を消しゴムで擦り白に戻しながら、空白に文字を埋めて行った。
(ええと、此処は……)
元々自分から進んで勉強する事の無い俺は、問題文を読み必死に頭を働かせる。
この一週間はいつもに比べたら随分と勉強したけれど、それでもまだまだその時間は足りなかった。その理由は単純明解で、最近家にやって来たランボのせいだった。俺の事なんか御構い無しで騒ぎ構わなかったら泣き出すしで勉強時間なんてほとんど取れなかった。
ーーそれは、例の交換日記を書くのも例外では無く。
俺にも分かりやすく、試験範囲のポイントが纏められた例のルーズリーフがリボーンに見つかって以来、無い時間を勉強に当てるしか本当の事を誤魔化す事なんて出来なくて、昨日まで毎日夜中まで勉強させられてた俺は毎朝遅刻ギリギリで。朝早くに登校して返事を書く、なんて事が出来なかった。
(あ、わかった!)
けれど、お陰でいつもよりは解ける問題が多い。それでも他人より解答出来る所が少ないのが、“彼女”に申し訳無かった。
*+*+*
「っ、終わったー!」
試験から解放されて、凝り固まった身体を伸ばす。
「ツナー、今回のテストどうだったんだ?」
「十代目、テストも終わった事ですし帰りましょう!」
野球バカなんて置いて!と笑う獄寺君に苦笑して、山本の質問に答える。
「んー、いつもよりは解けた気がするんだけど…赤点ギリギリっぽいのとかもあるし、やっぱり補修は免れないかなぁ…」
ほとんど憶えるだけの理科や社会系の科目は、まだ自信がある。けれど俺の頭がいきなり良くなった訳では無いので、基本的に自分の考える能力が重要となる国数英の三科目は、あまり自信が無かった。ーー今まであったどのテストよりも、解けた様な気はするんだけど。
「じゃあ今回も、俺と一緒でツナも補習っぽいのな?」
「あー、うん…多分」
二人して遠い目をした。
今回のテスト、出来が悪かったら夏休み中に補習がある事になっている。せっかくの長期休暇なのに、学校に来なくてはいけないんだ。夏休み中の補修の有無は、明日のテスト返却される時に告げられるらしい。
いつも補習から逃れた事の無い俺は、今回もそうだろうなと踏んで憂鬱になった。
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