letter for you...
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何とか精神的に休まらない休日を乗り越えた、月曜日。
昨夕の買い物の時まで忘れていたが、今日は家庭科の調理実習があるので自分の分の材料を持って行かねばならなかった。
(…てか、伝統だかなんだか知らないけど、調理実習で作ったおにぎりは男子にあげるとか、授業的には良いのか…?)
多分、客観的な意見で美味しく出来たかどうかを判断させる事が狙いなんだろうけど、私情が入ること間違い無しだ。
(内容がおにぎりなのは…まあ、炊飯器を使わずにお米を炊くやり方を憶える事が今回のメインなんだろうな)
小学校の時にも一度やった気がするが、あれは結構難しかった。火加減や水加減によっては、米が焦げ付いたりびしょびしょになってしまうからだ。
「リベンジマッチ、って所か」
買ったり作り置きしておいた具材を、タッパーに詰める。米も分量を量って丈夫な紙袋に入れた物を鞄に詰め込むと、私は家を出た。
*+*+*
「ねえ、田嶋さんは誰にあげるの?」
調理実習中、室内で飛び交う話は大抵コレだ。
ちなみに今の授業、男子は体育をしている。しかし、男子の受ける授業に家庭科が無いのかというと、そうでは無い。昨今では一人暮らしをする者も多いので、男子だって家庭科は必修だ。ただ、今は炊飯器という優れた技術があるので、米を炊く位なら女子だけに習わせておけば良いだろう…的な考えによる物らしい。
全く、この学校の制度はよく分からない。
「私か…。特に、誰に渡すとかは決めてないんだが」
「えー」
残念そうな顔をする調理実習の班員達。
そんな顔をされても、どうしようもないんだが。
「ほら、佐伯君とかにあげないの?隣の席だからそれなりに話してたじゃん」
「いやいや、それ言うなら山本君じゃない?この前からよく話してるの見るよ」
「山本君はファンの子があげるでしょ」
「じゃあ誰??」
どうしてこんなに、他人が誰におにぎりを渡すかで盛り上がって居るのだろう。
女子のこういった所が良く分からない。
「色々穴をついて、雲雀さんじゃない?!」
「確かに!田嶋さんってこの学校では珍しく、雲雀さんと普通に話せる人だもんね!」
「………水を差す様で悪いが、」
勢い良く振り返る班員達に言った。
「…しっかり火を見ておかないと、焦げ付いてしまうぞ」
「…………ハァ」
私の発言に何を期待していたのかは知らないが、溜め息を吐きたいのは此方の方だった。
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