letter for you...

□13通目
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昼休み。
今日は未だイタリアから帰って来ていないらしく獄寺君が居ないので、俺は山本とクラスの他の男子数名と昼食を取っていた。



「ねぇ田嶋さん。この前言ってた事何だけど…」

「ああ、先生には話して置いた。埜田ももしまた何かあったら言ってくれれば良い」

「あっ、ありがとう!」


聞こえてきた会話。
田嶋さんが、クラスの女子に頼まれ事をされている場面だった。


「ーーツナ、田嶋がどうかしたのか?」


会話の途中で視線を別の場所に移していたのに気付いたのか、山本が俺の視線の先を確認して言った。


「もしかしてお前、笹川の次は田嶋か?止めとけ止めとけ。理想高過ぎだろ」

「なっ!?そ、そんなんじゃ無いって!!」


冷やかし混じりの言葉に反論しつつ、思わず顔を赤くする。


「まあまあ、佐伯もツナをからかうのは止めろよ?」

「でもさー、実際に田嶋を好きなヤツって居るのか?アイツ結構頭かてーし、隣の席のオレも笑ってんのとか見た事無いんだけど」

「だよなぁ。ま、頼りにはなるけどな」


何故か話は田嶋さんの事に移って、皆は自分達の知ってる彼女のほんの一部を全てだと言うかの様に話し出す。
俺はそれを聞いて眉を顰めた。


「ーー田嶋さんだって、ちゃんと笑うよ」

「「「え?」」」

「…ツナは見た事あんのか?」


俺が小さくも強い口調で言うと、一緒に昼食を食べていたメンバーは、驚きに目を見開いた。山本もそれは例外でなく、質問してきたので俺はそれに答える。


「田嶋さん、俺の母さんと知り合いだったみたいでさ。この前、家に夕食食べに来たんだけど、俺の母さんと話してる時はそれなりに笑ってたよ」


俺だって彼女の事は、この前まで全然知らなかったんだ。
けれど少しでも知ったからには、彼女の事を悪く言うのは黙って見てられなかった。彼女だって感情があるのだから、悪く言われるのは嫌なはず。それは、俺自身がいつもダメツナと呼ばれていたからというのにも起因しているのかも知れない。

ーーそれ以外、どうして自分が其処まで強く反論したのか分からなかった。


「そうか…。まあ、田嶋も人間だしな」

「そうだな。つーか、アイツの笑った顔とかレアだろレア」

「俺もいつか見てみたいのな!」

「見れるんじゃね?ダメツナが見れたんだしなー」

「ハハハ…」


話の辿り着いた先に少し釈然としない物があったけれど、少しは皆も田嶋さんに対して見方を変えてくれた様に思えたから、良かったと思う。


窓から覗く空は、広く晴れ渡っていた。





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