letter for you...
□7通目
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時刻は午後八時過ぎ。
幾ら日が沈むのも遅くなったからといって、流石に外は暗くなっていた。
遠くに見える雲が、下にある街の光で赤く染まっている。
雲雀さんの人使いの荒さは予想していた事とはいえ、実際自分が体験するとなると予想と体感では随分違う事を思い知った。
まともな授業やその他活動が出来ないからと急遽全ての部活動も停止となり、殆どの生徒は早めの下校をしていたが、私は雲雀さんにこき使われていた為に、下校は決して早くないいつもよりも、更に遅くなってしまった。
「田嶋、帰るよ」
「あ、はい」
自分の目の前で山積みになっていた書類は半分以上私が確認したが、既に私よりも高かったはずの山を終わらせた雲雀さんが私の所にあった物も確認してくれたお陰で、私だけでするよりは幾分早く終わらせる事が出来ただろう。
……だからと言って、これ程の量の仕事を手伝わせた彼に感謝したくは無いが。
玄関へ降り、いつもの様に下駄箱を開ける。
「、あ…入って、る……」
慣れとは恐ろしい物で、当たり前の如く沢田の下駄箱を開けてしまっていた。
それでも開けたのは間違いで無かった様で、彼のロッカーの中には私が手紙と同封したノートが入っていた。
(入れる時間なんて無かったはずなのに…)
手に取ったノートは僅かに開いた癖がついていて、きっとこの中に返事が書かれているのだろうと思うと頬が緩む。
「ーー遅いよ、田嶋」
風紀が乱れるといけないから、と自ら送ると申し出てくれた彼の所へ「今行きます!」とノートを鞄にしまって、駆けて行った。
*+*+*
「た、だいま…」
「おかえり〜」
学生鞄を脇に投げ、私はリビングのソファに身を沈めた。
雲雀さんに家まで送ってもらったのは良いけれど、慣れないバイクに身体は悲鳴を上げた。
遊園地とかでもジェットコースターとか絶叫系が乗れない私は一緒に行った人を見送るだけなのに、安全ベルトも無いバイクはとにかく怖かった。
私の身体が震えているのが分かった雲雀さんは態とスピードを上げるし、金輪際、もうあの人に送ってもらう事は御遠慮したい。
「薫、ご飯出来たからお皿並べてー」
「…はーい」
重たい身体を鞭打って起こし、配膳の手伝いをする為にキッチンへ向かった。
流石に疲れていた身体は限界だったらしく、私は食事と入浴を終えるとそのまま深い眠りの中に意識を飛ばした。
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