letter for you...
□3通目
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「ーーにしても、こんなに早く、返事がもらえるとは思ってなかったな…」
薫は帰宅してすぐ、台所に居た母親に「ただいま」を言うと自室へと向かった。
その手には、四つ折りに折り畳まれているルーズリーフ。
もちろん、先ほど沢田綱吉の下駄箱から戴いてきた、昨日の手紙の返事であろう物だ。
「なんて、書かれているのだろうか」
少し曲がった折り目を指でなぞる。
細められた瞳が語るのは、喜びか、はたまた緊張か。
ゆっくりと、手を掛けた紙の端同士を別つ様に、それを広げーーーようとした所で。
「薫〜、ご飯よ〜」
階下から母親が呼ぶ声がして、手に持っていた紙をそっと机の引き出しにしまい、ダイニングへと向かった。
***
夕食と風呂を終え、ようやく一人の纏まった時間が出来た私は、沢田からの返事であるルーズリーフを広げていた。
「……赤ん坊、か…」
私が予想していた事情とは多少…いや、かなり違う様だが、彼がここ最近、前にも増して授業中に机に伏してしまっていた理由は、なんとなくだが分かった。
ーーそれにしても。
(自分の事も大変だろうに、名乗っても居ない私の心配までするなんて、)
なんてお人好しなのだろう。
とりあえず、
(私の事を何も教えない、
なんていうのはフェアじゃないな)
そう考えた私は、新しい便箋を取り出し、何から書こうか、と頭を捻らせた。
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