七日間のキセキ。

□大切なもの
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「――…、女、なんだよな…?」

「だから、そう言ってるじゃないか」


鬱蒼と茂る、草木の中。

まだ身体を動かせない俺は、獄寺の言葉に眉をひそめる。

もう既に、何度このやり取りを繰り返した事か。

呆れた視線を向けていると、はっ!と勢い良く顔を上げた。


「十代目は、知ってるのか…?」


少し間を開けてから、いや、と動ける範囲で首を振る。

すると、なんともまぁ予想通りというか、


「十代目を騙したってのかよ!!」


怒りのお言葉を頂戴した。


「……俺、男だとも女だとも言ってないし。それに、リボーンが黙ってろって…」

んな!?リ、リボーンさんが!??

見開かれた目が、彼の驚きを物語っている。

「そうだよ。だから俺に文句言うな」

「まぁそれなら、仕方ねぇよな…」

俺の説明にやっと納得したのか、獄寺は聞こえるか聞こえないか位の小さな呟きを口にした。





「――…そういやお前、十代目の…」

「、っ」


彼の言わなかった言葉尻。

それが何なのか、直ぐに理解出来た。

きっと言いたいのは、


「――……分かってる。でも、最初はそんな事考えてなかったんだよ。それに…」


俺がツナの部屋に居るって事。


「…それに、もう……戻れないんだ。ツナと出会う前にも、



―――俺の世界にも」


「、!!」

獄寺が息を詰まらせたのも、今の俺には判らなかった。

それほど俺の中は、


「俺にはこの世界に、帰る場所がないと思ってた。だけどツナや奈々さん、リボーンやお前、山本は、俺も此処に居て良いんだと言ってくれた。それが――


"男"と認識された俺だ


感謝と苦痛でいっぱいで。

自分が"女"と認識されてたら、この世界での居場所は無かったんじゃないか。

そう考えてしまう俺が居て。


「リボーンは俺が"女"だと知っていても受け入れてくれた。だけど、お前達もそうだという保障は何処にもない。だから、」


不安、だった。


受け入れてくれたはずの人達から、また突き放されるのが怖くて。

そんな事は無い、って頭の中では解って居るのに。

収まりが着いた様に見えて、結局の所、根本的なトコロで収拾が着いていない。

そんな状態だったから。


「だから――……言えなかった」



大切な人に、拒まれるのが怖くて。




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