世界とセカイを繋ぐ者。

□鍵と言う名の人柱。
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「………此処、は……」


目が醒めると、私は青々と茂った芝生の上に居た。


「っ、羚…?」

「ツナ!優香、翔太…!」


呻き声の方を向くと、傍らに倒れる様にしている私達の家族(ファミリー)の姿があった。


「オレは、大丈夫…。子供達も、ちゃんと息してるよ」

「良かった…」

「そうだ、他の皆は…?っ、リボーン…!!」


私がほっと息を吐いていると、傍でツナが周囲を見渡した後、其処に倒れている師に気が付いて其方へと駆けて行く。


「リボーン!リボーン、リボーン生きてる?!」

「ーー…うる、せーぞ」


ダメツナ、といつもの悪態が返って来た事に安堵して、肩から力を抜くツナ。その周りでは、他の守護者達も次々と意識を取り戻し、身体を起こしていた。


「にしても、昨夜に何かあったのか…?」


屋敷の中で任務の報告書を纏めてた所から記憶が無い、と言うリボーン。
守護者達も皆、この庭に出た事ーー厳密にいうと地震が起こった辺りから、記憶が抜けている様だった。


「……憶えて、ないの?…羚は?昨日消えそうになってたんだよ!?」

「私は、憶えてる…。夢、みたいな物を見て、誰かの声が聞こえ、て……」


気を失う前の所だけ、私は記憶が曖昧になっていた。大切な話をしていた気がするのに、何かが引っ掛かって思い出せない。


「ーーじゃあ、ちゃんと記憶が残ってるのは俺だけ…?」

「ツナは憶えてるのか。それなら、出来得る限り昨日あった事を説明しろ」

「…うん」


近くに、遠くに。
私達を取り囲むファミリーが、意識を此方へ向ける。

ツナの説明に、私も憶えている限りでその言葉を補っていく。そして、その説明も終わりに近付いていた時だった。


「っ、そうだ!フィーだよ、フィー!」

「フィー…?」


ツナが叫んだ名は、私のアニマル匣だった。でも、何故そこでフィーの名前が出て来るのか分からない。


「羚が消え掛かってる時、フィーがテレパシー…みたいに、俺の頭の中に話し掛けて来たんだよ」

「…フィーは何て言ってたんだ?」


ツナの言葉に嘘が無いと取ったのか、リボーンは話の先を促す。守護者達が口を開いていないその状況は何とも不自然で、異様な雰囲気を醸し出していた。


「ーー羚を、」


リボーンに向けられていた視線が、私の物と絡む。


「羚との世界を望むなら、一度世界を眠らすって…」

「っ、?!」


一瞬だけ脳に激痛が走り、途端にフラッシュバックする記憶。
逆再生する様に辿られるそれは、最終的に私の思い出せ得る限りの最初の記憶ーー生まれた世界での、父母と共に過ごす刻を最後に途切れた。


「っはあ、はぁ…」

「羚?大丈夫か?」

「ーー羚は心配無いですよ。僕が幻術で彼女の痛みを抑えて居ますので」

「骸…」


近付いて来た影に視線を上げて礼を言うと、何もかも知った様な顔をして


「貴女は必要な人間ですからね」


などと宣った。


「必要な人間…?何だよそれ」


しかし眉間に皺を寄せるツナに答えるのは、骸ではなく。








「私が、二つの世界を繋ぐ、鍵だったんだ」



私だった。






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