日常編

□標的2_再戦
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伸ばした自分の腕の先すら見えない様な靄の中、外界から切り離された空間でアイカは口を開く。



『ゴメンね。こーしないと終わりそーになかったから…』


「なんで謝るんだい?僕が負けたとはまだ限らないのに」



見えない視線の先に居るであろう人物に、雲雀は声を放つ。



『そうね――貴方にあまりケガさせたくなかったけど仕方ないか―――』


ピピピピピピ―――



雲雀の身体に、無数の痛みが走る。



「!!?」


ガクッ―――…バタッッ


雲雀はヒザをついた後、そのまま体が倒れてしまった。


「何―――…?」


『あまり強い痛みは感じてなかったから、わからなかっただろうけど、
貴方、体のあちこちから結構出血してるんだよ?
それに峰打ちも入れたから、貧血と合わさって貴方は倒れちゃったってわけ』


「……僕の負け、か…」


雲雀は首と視線だけを動かして、自分の体を見た。
この状況では見にくいが、確かに沢山の斬り傷がついている。


『ゴメン。今、ケガの手当てするから…』


近くか遠くか分からない所で発せられた声が近付き、傍らにやって来たアイカは雲雀の横でしゃがむと、雲雀の傷の所に何時の間に用意したのか分からない包帯を巻いていった―――








「――これでよしっと――もう動かしても大丈夫なはずだよ?」


「……なんで、こんな事をするんだい?」


自分が付けた傷なのに、と訝しげに見てくる雲雀の視線に肩をすくめ、アイカは言う。


「え?それは…私が貴方の事を嫌いな訳じゃない、からかな?
もういいか――霖霞靄露――『霽〜セイ〜』」


アイカがそう言うと、次第に靄は晴れていった―――――










「時間切れだ。お開きだぞ、お前ら」


「あ!靄が晴れてきた!!」


「どっちが勝ったんだ?」


「―――え!??雲雀さん!!?」


靄が晴れてそこに現れたのは、なぜか包帯があちこちに巻かれた雲雀と、そんなにケガをしている様子もないアイカだった。


「スゲーな。雲雀に勝ったんだ?」

「私が女だからって、少し手加減してくれたんじゃない?」

「気遣わなくていいよ。僕が負けた事は事実なんだし」


アイカの言葉に庇われたと思ったのか、むすっとした表情で言葉を返すと、そのまま雲雀はどこかへ行ってしまった…。


「オレ達は手も足も出なかったのに…!!」

「まーまー、落ち着けって」

「やっぱりお前、ボクシング部n『断る



アイカは了平の勧誘を彼が言い切る前に蹴ると、校舎内へと姿を消した。








「アイツ、確かに非常事態の時にでも役に立ちそうだな」


「まだそんな事考えてたのかよっっ!!」








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