日常編

□標的1_転校生
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午前の授業から解放され、業間休みとしては一番長い休み時間である昼休み。


青空の下、昼食を広げる三人の姿があった。




「――そういえばさ、ツナ。今日隣のクラスに転校生が来たんだってよ。
何でも獄寺と同じで、イタリアから来たっていう――」

「それは本当か、野球バカ!!?」

「まぁまぁ、落ち着けって獄寺」



沢田綱吉に獄寺隼人、山本武の三人組である。
彼らも他の生徒同様、珍しい転校生の話を話題に挙げていた。



「もしかしたら…10代目を狙って来たのかも知れねぇだろうが!!」

「え?それってどういうこと?」



一般の生徒と考える事は、多少なりと違っては居たが。




「それは大丈夫だぞ」


ツナのその質問に答えたのは――







「リボーンさん!!
――ってか何でわかるんスか?」

「そうだよ リボーン。何でそんな事…」

「まぁな。
その転校生、雲霓靄霞っていうヤツだろ?」

「あ、あぁ。確かそんな名前だったぜ」



リボーンの確認に山本が首肯すると、獄寺が眉間にシワを寄せた。



「『カスミ』なんて…また恐ろしいヤツが…」

「なに?『カスミ』?
獄寺君、何か知ってるの?」

「えぇ――」




そして、獄寺は語り始めた。





雲霓靄霞っていうのは、霞(カスミ)のアイカと呼ばれていて、その名の通り、いつも何時の間にか戦闘から逃げている事から、霞のように実体があまり掴めない事からそう呼ばれてるんス。

わかっている事といえば、
まず1つは、戦闘を極力避けているという事。

もう1つは、そいつとマジで戦ったヤツらは、たとえマフィアのボスでも、殺されなかったヤツなんか、いないそうです…。




「エェ〜〜!?
なんでそんな怖い人が並中に〜!!?
――って、ちょっと引っ掛かったんだけど、極力戦いを避けてるってなんで?
その人マフィアじゃないの…??」

「はい…そいつは一応マフィアである事を否定しているそうです…」

「そんな人がこの世界に いんの〜!??」


ツナの絶叫も虚しく、


「いるぞ、1年B組――お前達の隣のクラスにな」

「そ、そうなんだよなぁ〜…ハァ…」


肯定の返答が返ってきた。












その時、だった。




コツコツコツ――




「!!? 誰か来ます!10代目!!」


近付く足音に、獄寺はいつでも攻撃出来る様、警戒体勢をとる。


「いや、普通、オレら並中のヤツだろ…。
そんな身構えなくても…」




やって来たのは――



「誰かと思ったら、貴方達か」

「だ、だれ!??」

「あぁ、ゴメンなさい。
私は雲霓靄霞って言います。
どうぞよろしく」


其処に現れたのは、まさしく渦中の人、雲霓靄霞その人だった。


「、お前がっっ!? 何の用だ!!」

「え?
ただ、何で私の事知ってるのかなぁ…って、気になっただけ」

「お前がカスミか」

「えぇ。そうだけど何か?」

「お前、ファミリーに入らねーか ?」

「な!??なに言ってんスか、リボーンさん!!」

「ファミリー?…それは私にマフィアになれってこと?」



少々眉根を寄せて、アイカは視線をリボーンに合わせた。



「そうだぞ」

「……ボスはどうも、そこのツナとか言う人よね?」

「な、なぜそれを!??」

「あのねぇ…1つ言っとくけど、そんな大声で話してたら誰でも気付くわよ?
それに、雲雀さんが面白い奴って言ってたみたいだから、貴方の事を調べてみたの」

「えぇ〜〜!!雲雀さん!!?――ってなんで雲雀さんが…」

「昨日、彼との戦闘から抜け出す時に聴いて……って言うのは冗談で、この前一度、転入手続きしに来た時に、少し貴方達の会話を聞いてしまったから…なんだけどね」



「ああ、戦闘したのは本当よ?」と何でも無い様に言う彼女に、ツナは絶叫した。



「んな〜〜!!? 雲雀さんとの戦闘って何があったの〜!!?」

「一体、雲雀と何があったんだ?」

「まぁ、星を見るために風紀委員達を気絶させたって事ぐらいかな…」

「ぐらい…って…」



冷や汗をたらりと流すツナを安心させる様に口を開く。



「ん?――あぁ、大丈夫。
気絶させただけで、ケガはさせてないから」

「そんな事って可能なのか…?」

「私がしたんだから可能だったんでしょ?
で、私がファミリーに入るかって?」

「そうだぞ」



リボーンの真っ黒な瞳を見詰めて、その後ツナの方へと向き直る。



「じゃあ質問。風の噂で聞いた話によると…ボスは戦いや乱暴は嫌いなのよね?」

「え?オレ?…あ、うん…って、オレはマフィアにならねーって!!」

「なら…いいよ、入ってあげる。
ただし、私を戦わせるのは非常事態の時だけね」

「わかったぞ」



二人は完全にツナの言葉を無視して、口上の契約を交わす。
ニッと口角を上げたリボーンの笑みは、何処からどう見ても裏が無いとは言い難かった。



「んな〜!!? マジで入るの〜!??」

「間違えても、10代目の右腕はオレだからな」

「だから、お前は耳たぶだって」

「なんだと〜!!」



「…私は、盾でいいよ。
…命の、盾<ライフ・シールド>――」


「え…?」



獄寺と山本の言い争いで、小さく呟かれたその声はツナの耳には届かなかった。


それをもう一度聞き直そうと顔をあげると。







「やぁ。君、彼らと何をしてるんだい?」


「ひ、雲雀さん!!?」




ツナの瞳に、妖しく笑った彼の姿が映った。







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