日常編
□序章
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とある夜の11時を過ぎた頃。
並盛神社の境内で、二つの影が睨み合っていた。
「もしかして君は、1年B組に新しく転入するっていう、雲霓靄霞かい?」
一つの影は、殺気を飛ばして冷たい声を放ち。
「よく知ってるのね、私の名前。知ってるヤツなんかいないと思ってたのにな…。あなたは風紀委員長の、雲雀恭弥ね?」
もう一つの影は、放たれる殺気を物ともせず、柔らかい声で答える。
「そうだよ。
……一つ聞くけど、コイツらを倒したって事は、君は僕の学校の風紀を乱しに来たのかい?」
ギラリ、と雲雀の目が光る。
視線を流したその先には、学ランに風紀の腕章をした者達が、5,6人倒れていた。
「ん〜、それは違うかな。この人達、星を見てただけなのに、私の言い分をちっとも聞いてくれなくてさ…邪魔して来たんだもの。星は静かに見たいじゃない?だからちょっと気絶して貰っただけ。そんなに凄い傷は無いはずだけど…」
倒れている者達の胸は上下していて、それは彼らが生きているという事を示してくれていた。
「そんな事、気にしなくても良かったのに」
「気にしなくても良かったって…」
少女は呆れた様に溜息を吐く。
この少年は部下の事を何とも思ってないとは聞いていたが、正直言って此処までだとは思って居なかったのだ。
「一応、貴方達はこの街を守ってるんでしょ?
私もこの並盛は気に入ったし、これから過ごす街を守ってる人達を倒して、得な事なんてないし」
「そう…
ところで、君、コイツらを倒したって事は、ある程度強いんだよね?
君のこと、咬み殺してもいい?」
「どうしてもって言うんなら戦ってもいいけど…って、今?
まだ今日は時差ボケしてて眠いから…、また今度じゃダメなわけ?」
「僕は今、殺りたいんだ 」
「あ、っそ…じゃ、霖霞靄露〜リンカアイロ〜―――『靄』」
辺り一面に、濃度の濃い靄が掛かる。
「そんなので、僕の攻撃がよけられるとでも思ってるの?」
視界を失った雲雀は愛用の得物を構えるが、その答えは四方から聞こえてきた。
『思ってるよ?この靄は私の声を反響して、私のいる方向を分からなくしてくれる…
それじゃあね、オヤスミ雲雀さん』
その靄が晴れた頃には、そこにアイカの姿はなく。
動き始めた風紀委員達と、露にぬれた雲雀の姿だけがあった…
「雲霓 靄霞か…。彼女、面白そうだね。咬み殺す前に少しだけ、どんな人か見ておこうかな」
狂気を孕んだその瞳の持ち主は、愉しそうに口元を歪めた。
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