おとしたのーと。
□紫陽花
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水無月。
"水が無い月"と書くが、現代日本ではこの月が一番湿気の多い"梅雨"にあたる。
まぁ、昔の六月といったら今の八月頃になるはずなので、六月は水無月、で合っていたのだろうけれど。
―――にしても。
『ジメジメして、あ〜つ〜い〜…』
ゴロン。
畳の上に横になる。
水といったら冷たいイメージだが、この梅雨の時季は違う。
気温も高く湿気も高い空気は体温を下げる所か、不愉快なほどに身体中にまとわりつく様だ。
しかも、夏本番みたいに青空でもなく、日差しなんか感じられなくて。
いっその事、晴れた方が木陰とかで涼しさを味わうことが出来るのでは…?
そんな考えが頭によぎった。
そんな時。
「じゃあ、気分転換に散歩、なんてどうですか?」
『え?』
骸からのお誘い。
「緋露に見せたい物があるんです。だから行きましょう。というか、ついて来なさい」
若干、命令口調な所が気になるが。
『――…うん。行きたい』
「それでは、」
ハイ、と差し出された手。
それに気付かないほど、私も鈍くはない。
『ん』
さあ、貴方の手を取り行きましょう。
―――ところで。
『なんで骸が私の家に居たの?』
「ちゃんとお母様には許可を頂きました。―――いつでも好きな時に入って良い、と鍵も貰いましたし」
……色々とツッコミたい気がするが、今は気にしない事にしよう。
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