折れた翼は―
□標的7
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『お前がスモーキンボムか』
『だったら何だ!』
路地裏で突っかかって来た奴らを伸していた少年は、黒服の男に声を掛けられた。
『俺は○○ファミリーの幹部、△△だ。お前の腕を見込んでだが…』
ちらり、と男は倒れた者達を一瞥する。
『俺達の、仲間にならないか?』
あの時手を取ってしまったのは、間違いだったのだろうか…
「仲間にしてやる」と言われたその言葉は嘘では無い様で、彼らは少年に(共同ではあるが)部屋も、食事も与えてくれた。
(一体どれくらい振りのまともな食事だっただろう)
此処に来て、数日経ったある日。
「仲間になったお前に、見せておくべき"モノ"がある」
そう言って連れて行かれた先は、
「牢屋、か…?」
そのように形容しても差し支えない様な。
埃まみれで。
古い物から新しい物まで、幾つもの蜘蛛の巣の張った。
ジメジメと薄暗い場所だった。
「まぁ、そんな所だな。
此処は、とあるマフィアから"保護"した"奴"を収容している場所だ。"奴"は危険だからな」
この部屋だ。
言って見せられた光景に、
「っ!??」
目を見張った。
長く伸び、痛んで光を失った金の髪。
日の光に当てられて居ないのだろう、病弱かと紛う程の青白い肌。
手足にはめられた枷から伸びる鎖の行き着く先は、何処なのかも分からない程長く。
そんな、"自分より幼い少女"。
だがその姿の中でも一際目を引くのが、淀んだ瞳。
なにも映していない、見るという行為すら忘れたかの様なその目に、少年は慟哭した。
(その瞳は、世界を映さない)
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