折れた翼は―
□標的1
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†
久しぶりに立った、気がした。
随分と動かしていなかったらしい体は鈍っいて、すぐにフラフラと座り込んでしまったが。
「誰だ!?」
また"彼"が叫ぶ。
『―――私、は…』
「っ!!?」
私の声はかれていた。
声を出すのも久しぶりだった。
でも、彼が驚いた理由<ワケ>は違うと思う。
―――だって、彼は小さく呟いたから。
「――お、まえ……」
声、出たのか
掠れてる事より、発声した事に驚いたのだろうか。
良かったな
小さくて聞き取れなかったけど、少し口調は柔らかかった気がする。
『私…は…』
紡ぐ、声。
"彼"の質問に答えようとしたけれど、
私の意思に逆らって、意識は途絶えた―――――
私が名前を言えたかは、
覚えていない―――――
†