七日間のキセキ。

□別世界
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―――目の前の光景は、見た事のない物だった。


行き交う人、人、人……


誰もが知らない人ばかり。


友人でも無ければ、近所の八百屋のおっちゃんでも無い。



そう。

此処は、『俺の知らない世界』だった。



右を見ても左を見ても。

前を見ても後ろを見ても。

上を見ても下を見ても。


『俺の知らない世界』だ。


ただ分かるのは、
どうやら現在、昼を少し過ぎた頃であろうという事だけ。




――何もしなかったら時間が過ぎていくだけで、時間が勿体ない。

なので、道行く人の1人に声を掛けてみる事にした。


『あの、此処は何処ですか?』

止まってくれた、買い物途中らしき女の人は首を傾げた。

「もしかして迷子?
――にしてはちょっと大きいわね…。
えっと、此処は『並盛商店街よ』

彼女はそう言って、優しく微笑んでくれた。


「――君、お家は?
私の分かる限りだったら送って行ってあげるよ?」

任せて、とばかりに彼女は袖を捲った。


「――いえ、それが……ない、んです」


あるにはあるが、きっとこの世界には無いだろう。

そう思った俺は、彼女にそう言った。


「無いの? それは大変!!
良かったら私の家に来ない?
家事だけ手伝ってくれたら、食事も出すし、泊まって良いわよ?」

そんな、俺にとって願ってもない嬉しい話を持ち掛けてくれた。


「良いんですか!?
――じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きますっっ!!」


俺は犬が尻尾を振るが如く、瞳をキラキラさせた。

――犬の気持ちが少し解った気がする。


「どうぞどうぞ。
でも、家事はしっかり手伝って貰うわよ?」

彼女は綺麗なウインクをした。

はいっっ!!ありがとうございます!!――えっと……」


そういえば、名前を聞いていなかった。


「沢田 奈々よ♪
奈々って呼んでくれて良いわ。
あなたのお名前は?」


「俺の名前は葉月 羚って言います!
奈々さん、これから宜しくお願いしますっっ!!」




こうして俺の新しい生活が始まった――。




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