日常編

□標的4_対応
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「聞いたか?」
「あぁ、風紀委員が1人増えたんだろ?」
「しかも女だってさ」
「マジで〜!!?」


翌朝の登校時間。

生徒達の話題に上るのは、一人の女子の話だった。






「よっ!ツナ」

「あ、山本、おはよう!」


山本も朝練が終わったのか、玄関へと向かう最中に合流した。


「ツナは聞いたか? あの噂」

「?…何の?」

「風紀委員に女が一人増えたんだってさ。それに、そいつは今までの風紀のヤツよりも強いとかって話で――」

「え、それってもしかして…」


彼らの頭に、共通の人物が浮かんだ時、




「おはよう、ツナ。それはもしかしなくても私だよ」

「うわっっ!!ってやっぱりっっ!??あ、お、おはよう…」


後ろから本人の声が掛かった。


「まあ、驚くのも無理ないとは思うけどね」


困った様に笑うアイカの腕には、風紀の腕章が付けられていた。


「よっス、雲霓」

「あぁ、おはよう。…山本――だっけ?」

「知ってたのな、オレの名前」

「ま、一応ね」


前日に会った時は確り自己紹介が出来ていなかったのだが、アイカは山本の名前も知っていたらしい。


「ところで、なんで風紀委員に…?」

「何となく、雲雀がまとめている風紀委員ってのが気になってさ。昨日の放課後、雲雀に入れてくれって頼んだんだ。そしたら、役職をもらったよ」

「役職ってなんの…?」

「書記、だね。仕事は主にデスクワークらしいけど」

「へぇ…」

「スゲーな。あの雲雀に役職もらうなんて」

「…そーでもないよ」


彼女の言葉に感心した二人。
しかし、その次に彼女から発せられた言葉で、



「まぁ、昨日雲雀に勝ったから…かな?」

(そういえば、そうだった…!)



改めて、アイカの恐ろしさを感じさせられたツナだった。






「じゃあ、私、いろいろ準備あるし、先行くね」


そう言ってアイカが走り去った後、「十代目ぇぇ〜!!」と聞こえた声に、後ろを振り返った。












*+*+*+*+*

アイカside




私が自分の教室に一歩足を踏み入れた瞬間、



ビクッッ



騒がしかった室内は一気に静寂に包まれ、緊張が走った。
全員の視線が、一点に注がれる。


怪訝に思い、その視線の先を辿ると、行き着いた先は自らの左腕にある…風紀の腕章だった。



「あ〜、これか…。
私は他の風紀の人達と違って、貴方に危害を加えるつもりは無いから安心して貰って良いわよ。
……まあ、ケンカとかしたら私のほうが強いのかも知れないけれど」


ほっ、と何処からともなく息を吐く音が聞こえると、なんだか重くなっていた空気が少し軽くなった気がした。


(ってか、風紀委員ってだけで恐れられるのは、雲雀の影響が強過ぎるのか…)



そう思っていた矢先。









「雲霓アイカは居るか?」


開け放たれたドアから入って来たのは、リーゼントに学ラン。
どうやら三年の風紀委員の様だった。


「私だけど―――何か?」


穏やかな会話をしに来た訳ではなさそうなので敬語も使わず返事をすると、それが気に入らなかったのか彼のこめかみに青筋が立った。



「貴様、オレと勝負しろ。お前の実力も知らねぇのに、お前を風紀委員と認める訳にはいかねぇ。それに、お前がオレ達がもらえなかった役職を、どうして委員長に与えてもらえたのか、確かめねぇとな」


明らかにケンカ腰だ。
それに、後ろに他の風紀委員達を引き連れている。
私が負けたら、皆で私をリンチでもしようとしているのか…


「……分かったわ。でも、貴方達が負けたら、私の下にちゃんとつく覚悟はあるの?」

「――――…その時は仕方ない。場所は―――」

「じゃ、下で」


そう言って、私は窓から飛び降りた。

それに続き、少しためらってから、彼も窓から飛び降りて来た。







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