日常編
□標的1_転校生
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二人の対峙から一夜が明けて。
朝のホームルーム前のひと時が騒がしいのは、ここ並盛中学校も例外では無かった。
ガラララ――
「おはよう、みなさん。
えぇと、今日、新しくこの1年B組に転入してきた人がいます」
教室に入って来た人物を見て、皆が慌てて席に着く。
いつもより少し早めにやって来た担任が言うと、静かになったと思った室内が、再び喧騒に呑まれた。
「ダレダレ?」
「カッコイイ男子かな?」
「隣に獄寺が来てからあまりたってねーだろ?」
「静かに!――えぇと、この子がその転校生だ」
緊張からか誰かが唾を嚥下する音が聞こえ、辺りは再び静寂に包まれる。教室前方の入り口に、皆の視線が集中した。
「失礼します」
ツカツカーーー
靴の音を鳴らし、教壇へと上がる。
黒板の前に立った少女は言った。
「はじめまして。
私はイタリアからやって来ました、雲霓靄霞といいます。
どうぞ、よろしく」
彼女の姿を認めると、所々から小さく囁き合う声が聞こえる。
「久しぶりに来た〜!女子の転校生!」
「しかもメッチャ、キレイじゃねーかよ」
「ってか また帰国子女なのね…しかもイタリア、」
「獄寺君が来てくれた方がよかったのに〜」
「ちなみに」
彼女の口から、決して大きな訳では無いが、よく通る声が強く発せられる。
威圧を感じるその声に、クラスの皆が肩を揺らした。
「今の所、他人と馴れ合うつもり無いんで」
「よろしく」と言った彼女の表情には、明らかな牽制が見て取れた。
「で、では雲霓さん、君はあそこの、窓際の一番後ろの席だ」
「どうも」
「では、今から授業を始める――」
――その頃、屋上では――
「――ふ〜ん…今日から彼女、この学校に入ってきたんだ」
昨晩の影の一つ、雲雀は少し離れた所に控える風紀委員に言った。
「えぇ…昨夜の事件のせいで、風紀委員達が警戒していますが…」
「彼女は、こっちが何かしなければ何もしてこないみたいだし、彼女は僕が咬み殺したいんだ。手、出さないでね」
「…分かりました」
部下が校内へと戻って行ったのを気配で感じると、雲雀は昼寝をする為に目を閉じた。
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