折れた翼は―
□prorogue
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†
少女は9歳の頃、親に借金の形として売られた。
その先はマフィアで、彼らは彼女を道具にしようと育て上げた。
強く、強く―――
父や母が迎えに来てくれる事を信じ、
此処で待ち続ける為に、
命令に従い、血に手を染めた少女。
いつも笑って――
涙を呑んで笑顔で居れば、いつか二人が「ゴメンね」って、迎えに来ると疑わず。
強くなった。
笑って、笑った。
だが、ある時知ってしまった。
「アイツの親、アイツを売ってすぐに逃げてたらしーぜ」
「へー。ま、使えそうだし、上もアイツの事手放すのが惜しかったんだろ?」
強く、なった。
嗤[ワラ]って、嗤った。
自分を守る為の力は、
他人[ヒト]を傷付けるモノに変わった。
心を護る為の力は、
世界を嗤うモノに変わった。
――――リヨウサレルノハキライ。
それは誰もが思っているだろう。
だけど少女は、人一倍それを嫌うようになった。
昔から、親にも、他人にも、誰からも利用されてきた。
彼女が、知らなかっただけで。
でも、誰も救いの手など差し伸べてはくれなかった。
だから。
――――ヒトハキライ。
――――ヒトナンカ、シンヨウデキナイ。
人を殺した。
快感なんて感じない。
残ったのは、不快感だけ。
――――ホントウハ、ソンナコトシタクナイノニ。
少女を利用していたマフィアは、制御の利[キ]かなくなった彼女を牢屋へ閉じ込めた。
薄暗く、ジメジメとした殺風景な場所へ。
――――それから2年と半年、現在。
少女と世界を隔てていた、重々しい扉と鉄格子。
それは、唐突に破壊された。
爆風で砂塵が舞う。
その砂埃の中。
1つ。人影。
少女と然程[サホド]変わらないように見える、人影。
「誰がテメーらに利用されるかよっっ!!」
"彼"が叫んだ。
これが、彼女と彼との出会い――――
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