松風天馬に恋をする

□ジャージ
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「なまえちゃんどうしたの?!」

「濡れちゃった」

「見れば分かるよ!」


教室に入った瞬間、クラスの友達が大声を上げた。
事の発端は約10分前。
私はいつも登校時に学校の花壇の横を通りすぎる。だから今日もいつも通りに歩いていた。突然横から射撃を受けるまでは。


「あっ、あ!すすすすみませんすみません!」

「びっくりした...」

「本当にごめんなさいっ」


お花たちに水やりをしていたであろうその子は慌ててホースの水を止め、深々と頭を下げた。いや、私もちゃんと周り見てなかったからごめんね。そう謝ると女の子は泣きそうになりながら謝罪とともにもう一度頭を下げた。







「なるほど、話は分かったけどそのままじゃ授業受けれないよね」

「でも今日着替えもってないんだよね」

「...お前どうした」


後ろからの不機嫌そうな声に振りかえると幼なじみが眉間にシワを寄せて立っていた。


「あ、おはよう京ちゃん」

「なんで濡れてるんだ」

「まあ、色々ありまして」

「早く着替えろよ、風邪引くぞ」


そう言って京ちゃんは鞄の中からジャージを取り出して私に押し付けた。流石、部活あるから毎日持ってきてるのね。渡されたサッカー部のジャージを見て、思い浮かぶのは最愛の人。


「天馬とおそろいかぁ」

「早く着替えろ」


実際彼も日常生活は制服だし、ジャージは部員全員が持っているのでお揃いになるわけではないし、二人だけの特別な訳でもなんでもないけど、それでもなんか彼にもっと近づけた感じがして嬉しい。
そんなこと考えていたらどうやらにやけてしまっていたらしく、京ちゃんに少し強めに小突かれた。












お昼の時間。今日は天馬と二人でご飯を食べる約束をしていたので、お弁当を持って屋上に向かった。


「お待たせ」

「あ!れ?部活のジャージだ!」


それどうしたの?と首を傾げる彼。
お互いにお弁当を広げながら私は朝の出来事を話した。


「そっかー、剣城のジャージか!」

「うん、やっぱ少し大きいね」

「なんかなまえ嬉しそう?」

「え、うそ。そんな顔に出てた?」

「もしかして剣城のやつ着れて嬉しい?」

「京ちゃんのやつというかこのジャージを着れたことが嬉しいというか」


天馬とお揃いだなー、なんて。
言ってて少し恥ずかしくなってしまって照れ隠しで笑う。


「わっ、今のなんかぎゅってきた!」

「え、なにが?」

「凄い照れる!」


食べかけの弁当箱を横にずらして、近づいてきたと思ったら私が持っていた弁当も横に置いて抱き締めてきた。いや嬉しいけど!ここ学校ですが!?
ぎゅって力強く、でも痛くない程度に抱き締められて心臓がうるさい。彼に聞こえてたらどうしよう。


「...俺が貸してあげたかったって、そう思っちゃうんだけど、俺って独占欲強すぎるかな」

「じゃあ今度からは天馬に貸して貰うね」

「ほんと?じゃあいつでも貸せるよう準備しとく!」


そんな頻繁に借りなければいけないシチュエーションは訪れないとも思ったけども、目を輝かせている天馬が可愛かったので何も言わずに私も笑った。






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