松風天馬に恋をする

□イチャイチャ
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※高校生。木枯らし荘の住民になりました。




なまえー。雑誌ない?
部屋の扉を開け、中を覗き込みながら発せられた言葉に、ベッドで寝ていた私は重たい身体をゆっくり起こして座り直した。ぐるりと部屋全体を見回し最終的にベッド周辺を調べる。目的のものは枕元に無造作に置かれていて、部屋を見回す行為が無駄だったことに若干不機嫌になりながらも雑誌を手にとり、天馬へと手を伸ばした。
天馬は苦笑いして部屋に入り、雑誌を受け取りながらベッドに腰を下ろす。


「昼寝?髪の毛ぼさぼさ」

『ん〜…』


天馬の手が私の髪を撫でる。気持ち良い。

高校生になって高校が遠いということで、この木枯らし荘に住むことになった。天馬とのことは親も公認で、ここに住むこと父は少し不安そうな様子だったが母に丸め込まれ、秋さんも快く受け入れてくれた。
天馬ともその、高校生だし、付き合って5年だし、やることはやってしまっているので、今ではもうありのままの私を出している。


『天馬、ちゅーしよう』

「寝ぼけてる?」

『起きてる』


さぁこい。と腕を大きく広げて笑う。そんな私に彼も笑って覆い被さった。支え切れなくて二人してベッドに沈む。そして降ってくるのはキスの雨。
唇が離れて目を開けると大きなブルーの瞳と視線が交わる。
高校生になって、天馬は背も伸び、声も少し低くなり、なんというか全体的に色っぽさが身体から滲み出ている。しかもサッカー部の部長ときた。お陰で女子からの目線がいつも耐えない。正直妬ける。私と天馬が付き合っていると分かっていながら彼にちょっかい出す人がほとんどだから尚更。だからここで甘えてしっかり不安を取り除いておかないと。


「明るいうちからお誘いありがとう。でもこれから部活なんだ」

『あ、だからジャージなんだ。あれは誘ってはない。甘えただけ』

「え!あれで誘ってないとかたち悪い!他の人にやらないでよね」

『天馬にしかしないよ』


他の人に甘えたいと思わないし。天馬の背中に手を回しぎゅっと抱きしめる。その瞬間、少しのイタズラ心が芽生えてしまった。


『部活遅れちゃうよ?』


抱きしめた腕の力を緩めないまま、にっこりと微笑む。まあ、私の力なんてたかが知れてるし、男の天馬にはすぐ剥がされてしまうのがオチだけど。
案の定、彼は私を抱えたまま身体を起こしてしまった。
ああ、なんともあっけない。


「んー、それは困るかな」

『つまらないなぁ』

「ごめんね?」

『許す。部活頑張ってね』


きっと部活ではまた応援にきた女の子たち(土日にまでよくまあ来るものだ)に囲まれると思うから魔除けとまでは行かないけど、少しでも言い寄る人が少なくなりますように、と天馬の唇に触れるだけのキスをした。


「へへっ、いってきます!」

『あ、そう言えば秋さんに買い物頼まれてたんだった。待って、下まで一緒にいく』


元気よく部屋を出て行こうとした天馬を呼び止めて立ち上がった。ベットに無造作に置かれていた雑誌を手に持って。


『…天馬くん、君は私の部屋に何しにきた?』

「え?んーと、雑誌を取りに……あ」

『私が手に持ってるこれなーんだ?』

「いっけね!!」





―――――――――――

部活の応援で女子の悲鳴なんて現代じゃそうないですよね。

二次元の特権。





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