松風天馬に恋をする

□幼なじみ
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『あ、京ちゃんだ』

「あ?」


部活に行く途中、階段の影から見覚えのあるマントらしき制服が見えたので覗き込むと、案の定京ちゃん。


『そんな嫌そうな顔しなくても』

「さっさと部活行けよ」

『冷たい。ぼっちで弁当食べてる京ちゃんを一人にできないよ』

「ぼっちじゃねえ」

『あれ?なんで今弁当?』


つらつら言葉を並べたがそういえばと今更ながら聞く。お昼なんてとっくに過ぎてるし、部活遅れちゃうよ。なんて言ったら京ちゃんは大きなため息を吐いた。部活いけとかあしらっていたのに結局相手してくれるのが彼の良いところだ。


「昼はミーティングがあって食えなかった」

『じゃあ、天馬たちも今ご飯食べてるの?』

「部室で食べてるんじゃねぇの」

『…ぼっちー。』

「殴…蹴るぞ」

『わざわざ言い直した!』


蹴りのほうが絶対威力強いじゃん。小言を呟きながら京ちゃんの隣に腰を下ろした。彼は諦めたのか私のことを無視してご飯をもくもくと食べる。それをじっと見つめるが、う〜ん…京ちゃんって食べる時無表情だからなんというか、つまらないんだよね。
私が食べてあげたい。


「やらねぇからな」

『何故ばれた』

「こっち見過ぎなんだよ」


言葉の合間にもどんどん弁当の中身が京ちゃんの口の中に入っていく。見つめていることしかすることがないので変わらずじっと見つめていたけど、いけない。人が食べているのを見ているとお腹が空いてきてしまった。ああ、京ちゃんのお弁当も残るところ卵焼き一つになってしまった。最後に卵焼き残すとは、可愛いな剣城京介。


「ん、」

『んん?』

「やる」

『マジか』


箸に挟まれた卵焼きを此方に差し出される。口元まで来たのでパクリとそれを口に含んで何度も噛んで味わった。剣城宅の卵焼きは小さい頃によくおやつに作ってくれた。甘くてとても美味しいので大好きだった。


『んま〜い』

「甘過ぎね」

『そうかな?昔からこんな味だったよ。京ちゃんの味覚が変わったんじゃない?』


私の家の卵焼きは無難に醤油かダシだから、デザート感覚で食べれるってとても憧れるのだけれど、どうやら京ちゃんはそうじゃないらしい。


「お前は小さい頃から変わらないな」

『小さいって言ってもそんなに経ってないから変わらないよ』

「そうか。」

『あーでも、京ちゃんはよく笑うようになったね』

「…そうか?」


遠くを見て眉を寄せる。その姿を見て思わず笑ってしまう。


「なんで笑う」

『いやいや、だって自然に笑ってしまうほど楽しんでるってことでしょう』


すると京ちゃんは仏頂面になってそっぽを向いてしまった。いや、この場合照れての方が正しいだろうか。それにまた笑うと遠くの方から剣城ー。とまだ幼さの残る声が響いてきた。


「天馬か」

『だね』


二人で立って影から出ると教室を覗き込んでいた天馬はこちらに気づき嬉しそうに駆け寄ってきた。


「なまえもいたんだ!」

『うん、昔話に花咲かせてました』

「へぇ!今度俺にも聞かせてよ!」

『うん。』

「天馬、俺を呼びにきたんじゃないのか」

「あ、そうだった!じゃあなまえ、またあとでね!」

『うん、頑張って』

剣城早く早く、と引っ張っていく天馬と引っ張られる京ちゃんを特に深い意味はないが見えなくなるまで見つめていた。


あ、京ちゃん笑ってるや。





―――――――――――

取りあえず二人は仲がいいんだって話を書きたかっただけ。





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