松風天馬に恋をする
□帰り道
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学校からの帰り道、いつものように天馬と歩く。天馬があれやこれ話していることに耳を傾けて時折返事をする。
「今週の土曜日練習休みなんだ」
『そうなんだ』
サッカー部は毎日練習があるイメージなんだけど。イメージというか実際そう。天馬にもそう言ってたし。
ホーリーロードが終わって落ち着いたから身体を休めろってことなのかな。だったらゆっくりと休んで欲しい。天馬はキャプテンとして人一倍頑張ってたから。
『しっかり身体を休めてね』
「え!?…あ、ううん…」
歯切れの悪い天馬に首を傾げる。あー、とか、うー、とか唸り、かと思ったら静かになって、流石に心配になり、声をかける。
『て、天馬?』
「あ…のさ、」
『うん?』
「どっか、出掛けない?」
『…?』
「だから!土曜日!デートしませんか!!」
顔を真っ赤にして言うもんだからこっちまで恥ずかしくなる。そういえば私たち、一緒に出掛けたことがない。主に天馬の部活が忙しくて、そんな余裕なかった。お誘いはとても嬉しい、嬉しい…けど、私としては天馬にちゃんと休んで欲しいという思いが強くて。遠慮がちに天馬に問う。
『でも、せっかくの休みなのに…いいの?』
「せっかくの休みだから、なまえと一緒にいたいんだ」
『…えっと、』
「嫌?」
『嫌なわけないじゃん…』
だって1日天馬といられるってことでしょう?断る理由なんてない。ふいっと顔を逸らすが天馬は照れ隠しだと分かったのか「ははっ」と笑った。
「どこ、行こうか?」
『天馬はどこ行きたい?』
「うーん……、なまえの行きたいところに行きたい」
『ずるいなぁ。…あ、水族館、行きたい…かも』
デートの定番と言うし。水族館なんて、もう何年も行ってない。特別魚が好きってわけではないけど、なんでだろう。夏になると不意に水族館行きたいなぁ、なんて思う。
『定番過ぎる?』
「ううん。行こっか!」
ほんとにもう。どうして天馬の笑顔はこうもキラキラしてるんだろうか。こう、キュンとするというか、可愛い。惚れた弱みって言ってしまえばそれまでだけど、彼の笑顔には私だけでなく他の人も惹かれてる。京ちゃんだってきっとこの笑顔と真っ直ぐさに毒気を抜かれたんだよ。
『京ちゃんももっと愛想よくすればモテるのに』
「え?剣城?」
『小さい頃はよく笑って可愛かったのになぁ』
「へぇ、…」
ほんとあの頃は可愛かった。優一さんと毎日サッカーやって、今じゃありえないけど笑顔でなまえも一緒にやろうよ!なんて言ってた。もうそれが可愛いのなんの。それでも私がサッカーすることはなかったけれど、二人の姿を見てるだけでも楽しかった。
昔の思い出に浸って頬が緩む。不意にその頬を人差し指で押された。押したのは言わずもがな天馬である。
『な、なに?』
「可愛いなぁ」
『!う、えー、と』
「剣城ばっかじゃなくて俺も見て!妬いちゃうよ?」
『お、おう?』
まるで小さな子供が甘えてくるような感じ。にしし、と笑う彼を思わず可愛いと思ってしまった。いや、よく思っているけど、今日は一段と可愛い。狙ってやってるんじゃないよなこの子。頭撫で撫でしてあげよう。
『よしよし。』
「あれ!?子供扱いされてる!まあいっか!」
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