松風天馬に恋をする
□謎
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「どこが好きなの?」
何気になく口から出された言葉に弁当をつついていた箸が止まった。
『えっと……なにが?』
「天馬君だよ。どこが好きなの?」
同じように隣でご飯を食べていた天馬が咳込む。
…天馬の、好きなところ?
「か、狩屋!なんでそんなこと聞くの!?」
「だって気になんない?」
「でも確かに気になるかな」
「葵まで!」
天馬がぎゃあぎゃあ騒いでる間、考えてみた。急にそんなこと聞かれてもな。一目惚れだから…
『……顔?』
「顔!?」
『あ、違う嘘。いや、顔も好きだけど』
「あ、うん」
『ごめん。急に言われても出てこないや』
「えらくはっきり言うね」
出てこないのか…。と少しがっくりしたように苦笑いする天馬。あれ?なんか誤解させてしまったかな。違うんだよ。そりゃ、優しいとか、格好いいとかありきたりな言葉はパッと浮かんできたけどそれを口にするだけじゃ嫌だったんだよ。しっかり考えて、それを伝えたかっただけ。だから今は言えなかったわけなんだけど…。
先ほどよりも、あらかさまに萎れてしまった天馬を見て失敗したかも、と思う。天馬は顔に出やすいから、葵ちゃんに慰められ、狩屋には笑われていた。
早急に考えてみたけれど結局思いつかず、そのまま昼休みが終わってしまった。
天馬の好きなところ、好きなところ。…ダメだ、全部好きなんだけどな。全部とかなんか愛が軽い感じがする。うーん、と机に突っ伏しながら考えていると先生のお声がかかった。
「みょうじー。この問題解いて見ろ」
『起きてます』
「知っとるわ。顔を上げてこの問題を解け」
『先生、愛ってなんですか』
「お前の態度はあれか?先生に対する挑戦か?そうだな、愛というのは相手を思い、すべてを捧げることじゃないのか」
『そういうことは相手を見つけてから言ってください』
「…よぉし。あとで職員室来なさーい」
おうふ。まさかお呼ばれされてしまうとは。ちょっと先生をからかい過ぎたかも。今日は部活いけないかもなぁ。
それから授業後に職員室にいって先生から説教をうけた。長かったから途中にお菓子をせがんだら、机の引き出しの中からホントにお菓子が出てきて、しかもくれた。もう説教というより世間話になっていた。
結局、部活には行けず長々と世間話してから帰された。おっといけない。せっかくだから天馬のお菓子も貰っていかねば。
『先生、彼氏にもあげたいんでお菓子もう一個ください』
「リア充くたばれ」
『そんなんじゃ一生相手見つけられないですよ』
「それは困る。ほらよ」
『(ちょろいな)』
失礼しますと言い、先生に貰ったチョコを片手に職員室を出た。驚いたことに天馬が出てすぐのところで待っていてくれて、彼は私の姿を見るとふわり微笑んだ。
「剣城に職員室に呼ばれたってきいたから心配してたんだけど、覗いたら楽しそうだったからおとなしく外で待ってた」
『おお。あ、これ天馬に貰ってきた。』
「わ、チョコだ!ありがとう」
じゃあ、行こうか。と二人で並んで学校を出た。帰路を歩きながらそっと天馬の手を取る。今日は最初から恋人つなぎ。
『天馬』
「ん?」
『好きだよ』
「ん、知ってるよ」
『お昼のこと、気にしてないの?』
「気にしてない…ってわけでもないけど」
天馬は握っていた手を持ち上げ、「なまえは態度や行動で示してくれるから」と笑った。その笑顔にキュンとすると共に私の気持ちはちゃんと相手に伝わっていたんだと安心する。
『よかった』
「何が?」
『だって天馬元気なかったから』
「ああ…、まあ少しは期待してたからね」
でも今は全然!ブンブン繋いでいた手を振り回され少し手が痛かったけど何も言わずにいた。嬉しそうだったし、私も喜びを分け与えてもらえてるみたいで全然嫌じゃなかった。
ほんとに、私は彼に惚れ込んでいるんだなぁ。
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