松風天馬に恋をする

□告白する
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『な…ど、うして…』


額に汗を浮かべながら教室に入ってくる松風。どうしよう。会えた、ことは嬉しいけど…なんて言えばいいの?


『あ、の……』

「やっと会えた」


嬉しそうに笑う彼はゆっくりとこちらに近づいてくる。私は動くことができなかった。目の前には松風。心臓の音が相手に聞こえてしまうんじゃないかってくらい煩い。昨日はごめんなさい。言うなら今だ。今しかない。

松風。名前を呼ぼうとしたのにできなかった。だって、彼の手が、私の頬を自然に撫でたから。もう頭はパニック状態。


『…ーーっ』

「昨日泣いてたって」

『…え?』

「剣城から聞いたんだ」


もしかして彼は、私のこと心配してここまで来てくれたのだろうか。なんて、優しいんだろう。なのに私は。
頬を撫でていた彼の手に自身の手を重ねる。ピクリと彼の手が揺れたのが感じ取れた。今なら、言える。


『ごめんなさい。嫌いなんて言って』

「みょうじ……」

『思ったこと、一度もない』


むしろ逆。大好きなの。松風には空野さんがいるから決して口にはできないけど。
重ねていた手をゆっくりと離す。本音を言うと離したくないんだけどそういう訳にはいかない。部活にも早く戻らないといけないだろうから。


『松風。早く部活戻らないと』

「まだ俺の用は済んでない」

『?用って?』

「みょうじ。俺、彼女いないよ」

『……はっ?』

「好きな人ならいるけど」


え?ちょっと待って?だって松風は空野さんと付き合って…、え、ないの?
じゃあ、好きな人が空野さんってこと?そんなことわざわざ伝えられてもな。こちらとしてはショックなんだけど。


「意味分かってる?」

『えっと、空野さんが好き?』

「……全然分かってない」


がっくりと首を垂らす。そ、そんなに変なこと言ったつもりはないんだけど。


「好きじゃない子にわざわざ付き合ってないって誤解解きにきたり、好きな人がいるとか言いに来ないよ」


なんか分かりにくいな。えっと、好きじゃない子には言いに来ない……だから、つまり、その、ここに来たってことは。

顔を上げるとまっすぐに此方を見つめる瞳と目があった。彼の顔は赤くて、私まで赤くなってしまう。どうしよう、期待してしまっていいんだろうか。


「みょうじ、」
『は、はい』

「俺は…みょうじが好き、です」


いつか言われたら、なんて思ってた。でも絶対にないとも。夢じゃないだろうか。いざ言われるとくすぐったくて、嬉しくて、言葉で言い表せない。自分の気持ちを正直に伝えられる日がくるなんて。言っていいんだろうか。言いたい。


『私も』

ずっと好きだった。

初めて会ったあの日から。ずっと。
ふわりと何かに包み込まれた。なにかと言っても今ここには私と松風しかいないわけで、つまり私は松風に抱きしめられているという、ことで。


『まままつかぜっ!?』

「あっ、ご、ごめん!我慢できなくて」


ばっと勢いよく離された。驚いたけど離れてしまうのは離れてしまうでちょっとだけ寂しい。
でも、これで私たちはお互いに好きだってことが分かって伝えあったわけだから、これからは、恋人ということでいいんだよね。


それを聞くと松風はぼんっと顔を再び赤くして「そう、だね」と答えてくれた。わあ、どうしよう。幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。だって想いが実るだなんて考えたことがなかったから。自然に綻んでしまう顔を彼に向けた。


『これからよろしくお願いします』


これから新しい関係。できればずっと続けばいいな。そんな願いを込めた。







end.

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