松風天馬に恋をする

□誘ってみる
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葵の提案でお昼に誘ってみることにした。葵は二人で食べればいいなんていったけどそんな勇気あるわけもない。
思うんだけど、みょうじって剣城のことが好きなんじゃないかな。だって話すときとても嬉しそうというか楽しそうというか。それに用もないのに話しかけるなんて、幼なじみであってもあんましないんじゃないかな。少なくとも俺はない。自分が恋をしてしまっているから、ちょっとしたことに敏感になってしまう。恋って恐ろしい。


みょうじは剣城と一緒にいた。やっぱ仲いいよなぁ。あ、みょうじ笑った。俺と話すときも笑ってくれるけど、最近はその笑顔がぎこちない。最初は俺の思い違いかなって思っていたけど剣城に向ける笑顔を見て確信した。この前教科書借りに行ったときも少しつらそうだった。俺、もしかして嫌われてる?ほんとは話したくないって思われているのかな…。嫌なら嫌って言ってくれれば、…やっぱりそんなこと言われたくない。
いつもならなんとかなる!で切り抜けられるのにこの問題はそんなんじゃ切り抜けられなさそうだ。

二人を誘うと快く頷いてくれた。やった!せっかくだから信介や狩屋、いつも一緒にご飯を食べているメンバーも誘って屋上で食べよう。










『私って場違いじゃない…?』


屋上でお昼を食べているとふいにみょうじがそんなことを呟いた。確かにサッカー部のメンバーだけど別に場違いだなんて思わない。


「そんなことないよ!私はみょうじさんとお昼食べれて嬉しい!」

『そ、そうなの?』
「うん、だって周り男ばっかりだもん」


葵の言葉にみょうじは少したじろいでからそうか、と笑った。その笑顔が俺に向かれていたらな、なんて思ってしまうあたり、重傷かもしれない。ああ、俺もなんか言うべきかな。でもこういう時に限ってなにを言ったらいいのか分からなくて、みょうじをただ見つめる。こちらの視線には気付かずみょうじは弁当箱を見つめて眉を寄せていた。気になってそのまま見つめていたら隣にいる葵に肘でつつかれた。見過ぎ、と説教付きで。う…でも、気になるんだよ。もう一度みょうじに目を向けると今度は剣城の弁当箱と睨めっこ。


『…京ちゃん大根好きだったよね』

「あ?別に…」


好きじゃないと言おうとしたのかは分からないけど、次の言葉を言われる前にみょうじは自身の弁当箱から大根らしきものを取り出し、さっと剣城の弁当箱に入れた。当然剣城は怒る。


「おい、ふざけんなよ」

『大丈夫。変わりにウインナー貰ってあげる』

「なにが大丈夫なんだ」

「やるねぇ、みょうじさん」


ちゃかしたのは狩屋だ。みょうじは既に剣城の弁当箱から取り出したウインナーを口に含んでもぐもぐさせて首を傾げた。あ、ヤバイ。狩屋がにやにやしてる。なんか言おうとしてることに察しがついた。


「二人ともまるで付き合ってるみたいに仲いいねー」


当たったー。うわぁ、それだけは言って欲しくなかった。これで付き合ってるし、なんて当たり前のように言われたら俺どうしたらいいの。
恥ずかしげに頬を染めながら実は…、なんて言われたら俺どうしたらいいの。
いや待てよ。これをチャンスと捉えることだって出来る。付き合っていたら諦めよう。付き合っていなかったら…うん、素直に喜ぶ。
心臓が早鳴りするなか、みょうじは口を開いた。


『京ちゃんは小さい頃から一緒だから家族みたいなもん』

「付き合うとかありえねーよ」


……今、家族って言った?つまり付き合ってはない、ということ、だよね?


はぁぁ、めちゃくちゃ緊張したよ。まだ俺にもチャンスがあるってことだよな。って、何気に剣城貰った大根ちゃんと食べてるし。


恋愛初心者の俺は付き合ってないと分かった安心で顔が緩んでしまったらしく、また葵に小突かれた。





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