松風天馬に恋をする

□会話する
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二人が付き合っていると知っても、すぐに思いを消し去ることできるわけもなく。
今日も私は美術室からサッカー部を覗…観察しています。
やっぱりかっこいいなぁ。いつでも目は彼を追ってしまう。でも空野さんとつき合ってるんだよね。早くこんな思い消さなきゃ。…でも、もう少しだけ、初恋の気持ちを味わっていたい。好き、好きなんです。この思いがキミに届くことはないけど。すぐに諦めるから、もうちょっとだけ待ってください。


次の日、そんな私の心情を知るはずもなく、松風が笑顔で私のクラスに来て、私の名前を呼んだ。松風に名前を呼ばれただけなのになんかむずがゆい。嬉しい。

その気持ちをバレないように平然を装った。


『おはよう、松風』

「おはよう!みょうじ!国語の教科書もってない?剣城に借りようと思ったんだけど、次、俺も国語だからって断られちゃってさー」

『…それは、私も京ちゃんと同じクラスだと分かっていて聞いてるのかな?』

「みょうじなら貸してくれると思って!」


とんでもないことを爽やかスマイルで言われてしまった。私なら貸してくれるって…。松風には私が教科書使わず授業を受けてるように見えるわけ?残念、私はちゃんと教科書を目で追う派なんだよ。それに、その笑顔は止めてほしい。ドキドキしてしまう。カッコカワイイとはキミのことを言うよ。本当に。
相手に彼女がいると分かっていてもやっぱり好きだなぁと感じてしまう。いけない、いけない。諦めるんだ。私と彼はただの知り合いで、名前だって名字で呼ぶような浅い関係なんだよ。彼女がいても私と話してくれる。これで良いじゃないか。幸せだ。
ほかになにを望むことがある。


「あ、天馬!なにしてるの?もうすぐ授業始まるよ」

「葵!」


幸せな時間は長くは続かないとはまさにこのことだ。松風は此方をちらりと見ると「じゃあ、また!」なんて元気よく挨拶して、空野さんの方へ駆けていった。
二人が急ぎ足で並んで歩いていく姿を見つめる。本当にお似合い。私なんかが入り込めるわけがない。だって松風、あんなに幸せそうに笑ってるんだよ?
あの笑顔が私に向けられたら…、なんてあるはずもないことばかり考えて自分が惨めになってくる。
なんでこんなに好きになっちゃったんだろ。彼を好きにならなければこんな気持ち味わうこともなかったのに。





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