オレンジデイズ

□二人を仲良くさせようの会
1ページ/1ページ



『いらっしゃ…あ、来たねぇ!』


「こんにちは!ナノハさん!」


お誘いありがとうございます!と大きく頭を下げるハルカちゃん。
夏休みが終わって始業式の今日、お昼を奢るからと言って、バン君にハルカちゃんをお店に連れてきてくれるよう頼んだ。

何故かというと。


「げ、何故いる」

「げ。」

「まあまあ。ほら座って」


厨房から出てきたJr.はハルカちゃんを見た瞬間顔をしかめた。ハルカちゃんも同じように顔をしかめて私の後ろに隠れる。そんな彼女をどうどうと前に押しやって近くの席に座らせた。


『ほら、Jr.も早く座ってください』

「はあ?なんで」

『いいから』


Jr.もハルカちゃんをテーブルで挟んだ席に座らす。よし!


『お客様、ご注文はいかが致しましょうか?』

「おいなんの茶番だこれは」

『この暑い時期にはやっぱりざるうどんですよね。ハルカちゃんもそれで大丈夫?』

「あ、わたし…や、山かけうどんがいいです。おいしかったので…」

『りょーかい!』

「僕の話は無視か!」


Jr.を眼中に入れることなく厨房に戻った。中ではバン君がマメさんに質問攻めされていて私を見つけるとホッとしたように微笑んで此方に寄ってきた。


「どう?二人は」

『うーん…。あ、マメさん山かけ、ざるうどんです』


はいよ、とマメさんの元気な返事が返ってきた。それを聞きいてからバン君の方へ向き直る。そして二人でホールを覗き込んだ。


「いきなり二人はまずくない?」

『お見合いじゃないんだし。なんでバン君がそんなにそわそわしてるの』

「二人とも目すら合わせようとしてないよ」

『私達が入っても状況が変わるとは思えない。』


でも流石に話して貰わないとハルカちゃんを連れてきて貰った意味がない。
うーん、どうしたものか。

Jr.が此方の視線に気付いて睨んできたので、仕方がなく此方に来てくださいと手招きする。


『なにかしゃべって貰わないと困ります。せっかくハルカちゃんと仲良くなろうの会を開いたのに』

「君のネーミングセンス最悪だな。しかも初耳なんだが」

『……、ネーミングセンスなんて今はどうでもいいんです。取りあえずなにか話題を振ってあげてください』

「お見合いとなにが違うんだ…」

『ハルカちゃんをあなたにあげる気はありません。』


ただ二人が仲良くなってくれたらなぁ、と思っただけだ。Jr.友達いないし、良い機会かなって。本当に。


「ナノハさんっ…!そんなに私のことを思ってくれてたんですね!?」

『あれ!?なんでハルカちゃんまで来ちゃったの!?」


いつの間にかハルカちゃんまで此方に来てしまっていたらしい。ぎゅうぎゅうと腕にくっ付いてくる彼女にJr.の顔が若干引きつっているのが見えた。


「え…?なんだい君たちそういう…」

『Jr.ァァア!!お前それ以上口開くな!!』

「如月さん!くっ付き過ぎだから!」


バン君が焦ったように私とハルカちゃんを引き離そうとする。


『ハルカちゃん!Jr.が物欲しそうな目で見てるよ!ほら、あの人友達いないから』

「余計なお世話だ!!」

「ええ…。てか友達いないの?ウケる。…いだだだだっ」


無言でJr.がハルカちゃんの頭を掴む。彼女の力が緩んだと思ったら、今度は反対の腕が引っ張られて後ろから抱きしめられた。耳元でホッと息を吐かれる。


『(耳っ、息が……!)』


Jr.とハルカちゃんは二人で何か言い合っていて此方をみていないのがせめてもの救いだ。今、絶対顔赤い…。

バン君は2、3回私の頭をポンポンと撫でて、離れていった。ほんと、心臓に悪い。ぎゅっと胸の前で手を握りしめた。


「おーい!山かけとざる出来たぞー!戻れー」

『あっ、はい二人とも席戻って!』

「食べまーす!」

「子供扱いするな、一応言っておくがお前より年上だからな」

『いらないの?』

「…いる」


なんだかんだ言ってJr.がお父さんの作ったうどんが大好きだってことは知っている。こういう時だけ、少しだけ可愛い奴だと思うんだよね。

二人で時たま何か言い合いながらうどんをすする姿を眺めた。







―――――――――――


お客さんも常連ばかりで二人を微笑ましく見守っています。






.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ