オレンジデイズ

□あなたのことが、大好きなんです。
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御飯を食べている最中、食卓ではなんとも言えない空気が流れていた。
そんな中、真理恵さんはずっとにこにこしながら白米を口に運んでいる。真理恵さん、この空気なんとも思わないんですか。


真理恵「ほんとお人形さんみたいねハルカちゃん」


いつの間にか名前呼びになってる。
言われた本人は少し頬を染めて「そんなことないですっ」って手をブンブン振ってる。うん、その姿も可愛いんだよね。なんだか、彼女を見てると頭撫でたくなってくる。


ハルカ「ご飯とっても美味しいです!」

真理恵「そう、よかったわ〜」


二人だけで会話が進んじゃってる。バン君は口を開かずもくもくと食べ進めている。…めっちゃ機嫌悪いですがな。やっぱり嫌だよね…、自分を好いてくれた人が女の人を好きになっちゃうなんて。例えるならばバン君が隣に男の子つれてきて、この人のこと好きなんだ!って言われるレベル。お、おっかねぇ…!

でもこれって、私は喜ぶべきところなんだよね?
もう如月さんがバン君に言い寄ることもないし…でもバン君モテるだろうから、またすぐに別の可愛い人が…、まあそれは考えないでおこう。

今だから言えることだけど、こんな可愛い人にバン君は言い寄られていて、それにも関わらず彼は私を選んでくれた。それって凄いことなんではないでしょうか。ちょっと浮かれちゃいそうだ。
ご飯中にも関わらず顔が綻んでしまって、如月さんがそれに気づいて「どうしたんですか?顔が緩み切っていますよ。そんな顔も素敵ですけど」と言われた。


『ご、ご飯がおいしくってね!』


なんとかごまかす。
最後の言葉は聞かなかったことにしておこう。

それからご飯を食べ終えて、如月さんは丁寧にお辞儀をしてから帰ると言い出した。流石にこんな時間に女の子独りで帰すのは人間としていけないと思うので如月さんに声をかけようと思ったら既に彼女の姿が部屋にない。

え?ちょっと待って。あの子独りで帰るつもりなの?

急いで玄関まで行くと如月さんだけでなくバン君もそこにいた。そうだよね。バン君も流石に独りで帰すわけないよね。
ほっと息をつきながら彼らの側に近寄る。


ハルカ「あ、今日はおいしかったです!」

『あ、ありがとう』


作ったのは私じゃないからなんとも言えないけどこれでいいのかな?


バン「ほら、帰るよ」

ハルカ「え、いいんですか、送って貰っちゃって」

バン「こんな時間に女の子独りで帰らせる訳にはいかないよ」


嬉しそうにありがとうございます、と笑う如月さん。
……うん、なんというか、私って意外と嫉妬深いのかもしれない。二人が一緒にいるところを見ると、なんか凄いモヤモヤする。
お見合いのときもそうだけど、自分にこんな一面があったなんて。
バン君は自分が独占欲強い方って言ったけど、多分、私の方が強いと思う。
じゃあ、行こうか。と如月さんに声をかけるバン君を思わず引き止める。


『わ、私も付いてく、』

バン「ダメ。」

『え、』

ハルカ「なんでですか!私は万々歳ですよ!」

バン「だから駄目なの」


ぺちん。
優しく如月さんの頭を叩くバン君に如月さんは口を尖らせる。あー、もう。だからそれが嫌なんだってば。
でもここで駄々こねたって仕方ないから大人しく引き下がる。その代わりに一言付け足した。


『早く帰ってきてね』


バン君は不思議そうに首を傾げたが、わかった。と素直に頷いた。
如月さんもあとに私は!?と突っ込んできたので、またおいで。と返す。如月さんの嬉しそうな顔とバン君の何ともいえない渋った顔。対照的な二人に苦笑いした。





如月さんとバン君が出て行って15分。
ソファーに座ってテレビをじっと見つめる。内容は頭に入ってない。中はバン君と如月さんのことばかりで一杯だ。
はあ、わざとらしくため息を吐いていると、真理恵さんから食後のお茶を差し出された。


真理恵「心配なのね〜、バンのこと」

『う…』

真理恵「いくらナノハちゃんのこと好きだって言ったって女の子ですものね」

『真理恵さん…』


こうも的確に私の心情を読み取るとは、恐るべし主婦。
そうだ。如月さんはいくら私のことを好きだって言っても女の子。しかもバン君は如月さんにとって少し前まで恋していた相手。またいつ彼のことを好きになったっておかしくない。怖いんだ。
それだけじゃない。私、彼を好きになればなるほど、独占欲が強くなっていく、バン君が他の女の子と仲良くしてるところを見たくない。アミちゃんやランちゃんを除いてだけど。
自分の醜い感情を押さえきれなくなりそうで怖い。


『私、嫉妬深いんです』

真理恵「そんなのはみんなそうよ」


にっこりと微笑む真理恵さん。
あ、癒やし。って今はそうじゃないや。


真理恵「大好きな人には自分を見て欲しいって当たり前じゃない?」


悩むことはないと思うわ。そう言い、さらにお風呂先入っちゃうわねー。と付け足して真理恵さんは部屋を出て行った。 独りになってもう一度考える。私は恋愛なんてしたことがなくて、彼を好きになって、大好きになって。慣れないことばかりだけど手をつないだり、抱きしめてくれるとくすぐったいし、それ以上にとても幸せで、
そこまで考えて、玄関の方からただいまー。と陽気な声が聞こえてきた。如月さんを送りに出て行って30分程たった頃だった。

はっとして席を立ち上がるとバン君がリビングに入ってきた。彼の姿がどうしようもなく愛おしくて、素早く歩みよって抱きつき、彼の胸に顔をうずめた。


バン「っ!?」

『おかえり』

バン「た、ただいまっ…」

『心配した』

バン「??う、うん?」


声の様子からして、もう訳がわからない、というようなバン君の表情が読み取れた。

話を戻すけど、こうやって相手に抱きつきたいとも思う。こうやって触れることができるのが私だけだといいなとも。
大好きな人には自分を見て欲しい。嫉妬するのだって当たり前。じゃあ、私のこの感情の在り方は間違ってない?これでいいのかな?
バン君もこんな感情を持ってるのかな。


『バン君』


顔を上げて名前を呼んで、すっと両手でバン君の顔を包み込む。


『キスしたい』

バン「え、――っ」


初めて私の方からキスをした。といっても数えるほどしかまだしていないんだけど。こくり、とバン君が喉を鳴らす音が聞こえてきて、名残惜しむようゆっくりと唇を離す。
…できた。でもキスってこんな感じでいいのかな。
閉じていた目を静かに開けると顔を真っ赤に染めた彼の姿が目に入った。


バン「もっ…、どうしたのさっきから……」


相手の切羽詰まった様子にこちらは余裕が出てくる。
好きな人には私を見ていて欲しい。じゃあ、なによりまずはあなたが私のものであるということを彼自身に理解して貰うところから始めようと思って。


そうだね、簡潔に言うとつまり、

あなたのことが、大好きなんです。






―――――――――――


甘くしたいなと思って。


私の文才の無さのせいで夢主がなんかヤンデレちっくな感じになってしまいましたが、彼女をそんな風にするつもりはありません。
ただ、バン君が大好きなんです。
私の中ではいつまでも純粋な子でやっていけることを願っています。





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