オレンジデイズ
□まさか本当に
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あれから二日後、バン君が無事修学旅行を終えて帰ってきた。片付け、整理を手伝おうと思ってバン君の部屋に行く。一段落して休んでいるとバン君はお土産をまとめたところをあさくりだした。
「はい。これお土産」
と言われて手渡されたのは長方形の箱。なんだろう?この大きさはキーホルダーでもないしネックレスとしてもでかすぎる。そもそもバン君がネックレス買ってくるとか悪いけど想像できん。
『開けていい?』
「どうぞ」
返事を貰ってから丁寧にシールを剥がしてゆっくりと開ける。中に入っていた物に目を見開いた。
『こ、これはっ…ケーキ!?』
「ブラウニーだって。ジェシカに頼んだら作ってくれた」
『え、ジェシカ?これジェシカが作ってくれたの?』
まさか本当にジェシカの手料理が食べれるとは思ってなかったから放心状態に陥る。ポカンとブラウニーを見つめる私の頬をバン君はペチペチ叩いた。
「大丈夫ですかー?」
『…あかん、感動した。これ食べれん。永久保存や』
「いや、食べてあげて。食べ物粗末ダメ、絶対。」
言われてそれもそうかと箱からブラウニーを取り出す。ご丁寧にカットされていたので1ピースつまんでかじりついた。しっとりした食感でチョコの甘さが口の中で広がる。
『おいしい〜』
「ジェシカだからね」
『幸せだわぁ、ありがとう』
「どういたしまして」
ふわりと微笑んだ彼に急に恥ずかしくなって目を逸らす。
「あ、照れたな?」
『て、照れてない!』
「顔赤いよ」
『今日は暑いですからねっ』
「否定はしないけど、ちょっと無理あるんじゃないか?」
『うっ…』
墓穴掘った!
でもバン君の笑顔がかっこよくてドキドキしたなんて言えない。
言い返せなくなった私は黙って目をそらしたままケーキを口に含んだ。やっぱりおいしい。
食べ終えたあと、バン君が「ナノハ」と呼んだので目線を戻すと腕を引かれて抱きしめられた。ポンポンとあやすように背中を叩かれる。
『ど、どうしたの?』
「いや、可愛いなぁって思って」
『かわっ?!』
「あとナノハ不足」
『え、ええ?』
らしくない言葉に頭がついていかない。顔をあげるとバン君とばっちり目があった。
『……ッ…!』
思ったより近いっ!
離れようと思ってバン君を押したがビクともしない。逆にしっかりとホールドされてしまい、さらに引き寄せられた。いつもより少し低い声で名前を囁かれ再び彼と目が合う。手が頬に添えられて肩が小さく揺れた。
あ、これはやばい。来る。
そう感じとったのに身体はバン君を見つめたまま動かない。
自分自身もどこかで期待していたからかもしれない。
ゆっくりと近づいてくる彼に対して目を静かに閉じた。
優しく重ねられた唇は冷たくて柔らかかった。一瞬で離れてしまったけど、感触も温度もしっかりと伝わった。
目を開けるとバン君は顔を両手で隠してバタンと倒れる姿が目に移る。
『キス、した?』
「…うん、した。」
『バン君の唇、冷たかった』
「ナノハのは温かくて、…あと甘かった」
『大丈夫?』
「大丈ばない。俺もれっきとした男だったって再確認した。」
いやいや、それ普通私が言う言葉ですから。なんで本人が言ってるの。
なかなか起き上がらないバン君を見かねて私も寝転がる。手をどけると彼の真っ赤な顔が見えて微笑んだ。バン君可愛いなぁ。
「…余裕そうだね」
『年上の貫禄ってやつ?』
「ムカつく…。」
頬を抓られて痛いといったらバン君はあどけなく笑った。
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