オレンジデイズ

□うらやましい、なんて
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予定通りバン君は4泊5日の修学旅行に旅立っていった。


『A国かぁ』


真理恵さんに頼まれた洗濯物を干し、空を見上げてふと呟く。もう、A国には着いただろうか。


『お土産なにかな』


家でる前に「お土産なにがいい?」と聞かれたがA国で有名な物が分からなかったので、ジェシカの手料理がいいと答えたら頭を小突かれた。なにを買ってきてくれるのか楽しみだ。











二日目。


『は?ここでですか?』

「ああ!ホントはもっとちゃんとした所でした方がいいんだけどな。あんま豪華だと気が引けちゃうから取りあえずここでやって欲しいらしくてな!」


Jr.のお見合いをこの店でやると伝えられた。


「んでな、そこで相談なんだけど」

『嫌です。』

「まだ何も行ってないんだけどな」

『ろくなことじゃないことは分かります』


朝二人しかいない時間に相談なんて絶対ろくなことじゃない。女の勘。


「見合い相手に出すな、うどんを作って欲しいんだよ。」

『マメさんが作ればいいじゃないですか!』

「俺も立ち会わなきゃいけないんだよ。なんなら嬢ちゃん行くか?」

『作らせていただきます!』

「そうか!メニューは山かけだ!」

『ラジャー!』


わざとらしく敬礼したらマメさんも姿勢よく敬礼した。
マメさんが機嫌よく厨房に入って行くのを見送ってハッと息を呑む。
とんでもない重大任務を任されてしまった。ここで不味いもの作ったらイメージ落とすよなぁ、失敗出来ない。
胃がキリキリ痛んだ。


バン君に相談したいよ。慰めてもらいたい。 彼といると嫌なことを忘れられる。
幸せな気持ちになったがすぐに家に帰ってもいないんだと気づき、寂しくなった。











三日目。


一週間なんてすぐだって思っていたのに。


『はあ…』

「どうした、嬢ちゃん」

『あ、いえ…』


マメさんに指摘され慌てて口を噤んだ。そういえば今日ため息しかしてないような…。しっかりしなきゃ。
開店時間になってお昼になるにつれお客様が増えていった。茹でたうどんを盛り付ける作業を繰り返していると隣で作業しているマメさんから声が上がった。


「嬢ちゃん!今日はもう上がれ!」

『は?え?』

「ほれ、まかないだ。これ食って帰りな!」


マメさんから湯気立っているきつねうどんを手渡された。器が熱くて落としそうになるがなんとか持ち替えて安堵する。ダシの匂いが食欲をそそる。


『でも…』

「嬢ちゃんのため息聞き飽きた!」

『うそ!溜め息吐いてましたか!?』

「溜め息しか吐いてねぇよ!」


気をつけていたはずなのに。
どうやら無意識のうちに吐いていたらしい、信じらんない。

いたたまれなくなって目の前の人にお辞儀をしてから厨房をあとにした。


『一週間なんてすぐだよ…』


まだ実質二日しか離れてないのに、なに寂しがってるの。
5日ぐらい全然平気だって言ったくせにカッコ悪い。
更衣室で一人、うどんを啜る音が響いていた。





夜になってすることもなく部屋のベットでゴロゴロしていたら不意にCCMが鳴った。なんだろうと思って起き上がってディスプレイを覗くとメールが一通受信されてる。送信者はアミちゃんだ。

一応学校行事なのに使って大丈夫なのかと心配になったが取りあえずメールを見ることにした。


『あ、写真がついてる』


本文はなにも書かれておらず、代わりに何枚かの写真がついていた。フォルダーに保存して一枚ずつ開く。


『…わあ、』


写真は修学旅行中に撮られたものでカズ君がバン君の首を腕を回しそれによりバン君は手に持っているアイスを落としそうになっている。
巧いこと撮ったなー。バン君の必死な顔に笑みがこぼれた。

二枚目の写真ではバン君を含めた数人の男の子が楽しそうに枕投げをしている。
これアミちゃんがとったんだよね?部屋割りが気になる…。

三枚目はバン君単体でお風呂から出たばっかりなのかタオルを首に掛け、頬を少し赤く染めて照れた様子で此方を見ている。
…可愛いなぁ。


四枚目はお化け屋敷の前で逃げようとしているカズ君の首根っこを掴んで笑顔で引き止めているバン君の写真。
……。


五枚目はみる気にならなかった。CCMを閉じ手に持ったままベットに倒れ込む。

思い出してしまった。私がバン君たちのように学校生活を送っていた元の世界、私の世界のこと。親友のこと。


親友の名前を呟く。今、どうしてるだろうか。心配してるかな。
千里、私彼氏ができたんだよ。すごくかっこよくて意地悪だけど優しいの。自慢したいくらい。


『…あれ?』


おかしいな。視界がぼやけてきた。枕に顔を押し付ける。


私はどうしたいんだろう。
この世界に来れて嬉しいって、幸せだって思っていたのに。どうして、涙が止まらないの。


こんなこと思いたくなかった。


彼らが








うらやましい、なんて。





―――――――――――


久しぶりに更新です。


今、友達に小説書いているもんでそっちに手がいっちゃって……すみません言い訳です。


夢主も普通の女子高生ですから、みんなのように気心の知れた友達とわいわい騒ぎたいんです。

こんな夢主ちゃんをバン君がどう受け止め、支えていくのかをこれから書けていけたらいいなと思っています。








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