オレンジデイズ

□難しいことはよく分かりません。
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「聞いたぜ嬢ちゃん!付き合い始めたんだってなぁ!」

『な、何故それを!』


知ってるんですか!
と、うどんの生地を麺棒で伸ばす作業を中断して、マメさんの方をみる。


「バカ息子が言ってたからな!」

『Jr.が?(私言った覚えないんだけど…)』

「アイツもいい年なんだから早いとこ相手見つけないとな」

『いい年って、まだ20歳じゃないですか』


お見合いはやりすぎじゃないですか?
問いかけるとマメさんはやっと動きを止めてこちらを見た。
別にJr.を助けてやろうなんて思ってない。私は自分が思っていることを言っているだけだ。お見合いなんて正直、昭和の時代か!ってツッコミたくなる。しかもどこぞの金持ちのぼっちゃんならまだしもここはただの食事処だ。


「でも、アイツには出来ればこの店を継いで貰いたいからな」

『Jr.が受け継ぐっていろんな意味で不安ですね』


確かにな!とマメさんは豪快に笑いながらまた手を動かし始めた。それに見習い私も作業を再開する。


『じゃあ、なんでそこまでして…』

「確かにアイツは俺と同じで顔がいいけどな」

『……。』


…聞かなかったことにしておこう。


「アイツ、中卒で高校行ってないんだよ」

『え、』

「今時、中卒で仕事が手に入るほど甘い世の中じゃねぇからな」


そんなの聞いてないよ。じゃあ、マメさんはJr.のために。


「確かに見合いは早いかもしれねぇが、早いうちに身を固めて働いて貰わねーと、安心して俺が退職できないからなぁ」

『…家族愛ですね』


反論した私が馬鹿らしくなってきた。彼は彼なりに息子の身を案じていたんだ。Jr.はいいお父さんを持ったな。


『因みにお見合いの子はいくつなんですか?』

「13だ!」

『じゅっ…!?』


中学生かよ!
もしかしてJr.が嫌がっていたのって。


「アイツ、ガキは嫌だって言ってなぁ」


ですよねー!そんなことだろうと思いましたよ!ふざけるなよあん野郎。

なかなか可愛い子なんだが。
マメさんは切り終えた生地を沸騰した鍋に放り込んだ。


「写真みるか?」


そういって私の返事を聞く前に奥に行ってしまうマメさん。私もそれに続いた。


「ほら、この子だよ」


受け取った写真に写っていたのは、二人の女の子が並んで楽しそうに話ながら歩いている姿。その片方を指差しながらマメさんは可愛いだろ?と言った。


確かに可愛い。大きな瞳に小さな顔、テレビに出ても違和感ないのではないかというくらい美人だ。

ホントに中学生?と疑いたくなる。


そしてもう一つ。この女の子より気になったことがあったからマメさんに問いかける。


『マメさん、この写真どこで撮りました?』

「……」

『何故黙る』

「…下校中にパシャリと」

『知ってますか?世間一般では盗撮って言うんですよ?』

「いやはや、知らなかったなぁ!」

『その言い訳は無理がある!』


大の大人がなにやってんだ!
どなりつけるとマメさんは逃げるように「そろそろ茹で上がったかな!」と戻っていった。


全く、息子も息子だけど、親も親だな!

大丈夫か、この親子。と本気で思った。






―――――――――――


バン君の出番が皆無(笑






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