オレンジデイズ

□手をとって
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目の前で顔を真っ赤に染めて固まっているナノハの髪を優しく掬う。
ビクリと肩を大きく揺らして我に返った彼女は、視線を左右に逸らしながら小さく声を出した。


『え、あの…、好きって……』
「うん。」
『その、likeの、方…?』
「………ナノハ、」


彼女の腰に手を巻きつけこちらに引き寄せる。


「これでも、分からない?」


耳元で囁くと、相手の息を呑む音が聞こえてきた。しかし、


トン――。



決して優しいとは言えない強さですぐ押し返された。



突然の拒絶になすすべなく腕を離す。俯き表情が見えない状態で彼女は口を開いた。


『…お風呂、入ってきて。』


……何故このタイミング?


「いや、今それどころじゃ…」
『いーから、行け!!』
「ちょ、押すなよ!」
『空気よめ!』


お前が言うなよ。いい雰囲気だったのにぶち壊しやがって。
そう言い返そうと思ったがその前に廊下に追い出された。
バタンと扉がしまり一人取り残される。


「(なんなんだ…)」


告白して、抱きしめて。

そこからまさかの拒絶。

ショックを受けていないと言ったら嘘になる。押し返されるとは思ってなかった。


「…これ、フられたことになるのか……?」





*********************



扉に手をついて廊下側から聞こえてくる階段を下りる音を耳にしながら大きく息を吐き、膝から崩れ落ちるように座り込む。





――好きだよ。


――これでも、分からない?



『(liKeじゃないってことは、やっぱり…love、の方なんだよね…?)』


さっきのやり取りに顔を赤くして、ふとそんなことを考える。生まれてこの方17年。恋愛のれの文字もなく過ごしてきた私には両想いなど衝撃的なことでどうすればいいのか分からなくて、思わず押し返してしまった。
好きなのに。私もだよ。と、そう言えばいいだけの話だったのに。


『なにやってるんだ、私は』


くしゃりと前髪を握る。


どうする?

気まずいよ。なんて言えばいいんだろう。早くしないとバン君風呂でちゃう。


扉の前に座り込んだまま働かない頭をフル回転させる。
さりげなく私から告白する?

…さりげなくってどんなんだよ。

直球勝負か?

恥ずかしくて言える自信ないよ!

じゃあどうすればいいんだー!

考えても考えても良い案が浮かばない。


ガチャリ


扉の開く音の次にゴツンと鈍い音が響いた。突然開いた扉に私の頭が激突。あまりの痛さに頭を抱え込んだ。


『〜〜〜〜〜っ!』


「あ、ごめん。」


まだいたんだ。

小さく呟かれた言葉に私は頭を手でさすりながら顔をあげて相手を睨みつけた。


『あのねぇ!あんなこと言われて…』
「そのことなんだけど。」


まだ話しているというのに。彼はそれを遮るように口を開いた。仕方なく口を閉じて向こうの言葉をまつ。



「なかったことにしない?」




それだけ言ってすぐに顔を背け彼は逃げるように部屋を出て行った。






………うん?



なかったことに?


あれだけ悩ませておいて。なかったことにしよう…だと。


ふつふつと何かが沸き上がってくるのを感じた。拳を強く握る。


これはアイツに一発言ってやらないと気が済まない!
そう思った私は唇を引き締め、バン君のベットから枕をむしり取って、階段を駆け下りた。




『バン君の……ッバカァ!!』


リビングに入りソファーでくつろぎながらテレビを見ているバン君の頭めがけて思いっきり振りかぶる。枕は見事にクリーンヒットしてバン君は小さくうめき声を上げた。


キッチンにいた真理恵さんも驚いてこちらを見ている。
真理恵さん、騒がしくてごめんなさい。
そう心の中で謝り、キッとバン君を睨みつけた。


『なかったことになんて出来るわけないでしょ!バカバカバカ!』
「は、え?」
『嬉しかったのに!』
「…!」
『人の気持ちしろうともしないで逃げて、弱虫!弱虫野郎!』


ああもう、自分でもなに言ってるか分からないよ。


『バン君なんか…、大っ嫌いだ!!』


言い切った私は勢いで家を出た。
意味もなく走る。どこへでもいいから行きたかった。取りあえず今は家にいたくない。
無我夢中に走った。








―――――――――――


…あれ?

終わらせようと思っていたのに、あれ?

もう1話ぐらい続きそうです。





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