オレンジデイズ

□キャラが濃ゆいです。
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『この[末]は再読文字だから[未だ]と[ざる]と読めるようになるの。分かる?』
「…なんとなく。じゃあこの文は……こうなるってこと?」
『そう!正解』


スラスラとペンを動かすバン君を横目に答えと比べる。バン君は理解能力が長けているから教えるのが楽。ちょっと説明するとすぐ理解してペンを走らせる。


「あ、もうテスト範囲終わってた」


そこは気づけ。


********************








『アキレスディード人気なんだねー』


バン君はあれから勉強する気はないらしくLBXのメンテをしている。私はというとベッドで横になりながらLマガを物色。ほんとにLBXのことしか書いてないなこれ。


「ナノハちゃーん!お友達が来てるわよー!」


下から聞こえてきた言葉に首を傾げる。バン君も不思議そうに私をみた。


『…お友達?』
「ナノハ、友達いたんだね」
『失礼な。友達くらい…。でも、アミちゃんと遊ぶ約束した覚えないなぁ』
「(アミなんだ。)」


真理恵さんを待たせる訳にも行かないのでバン君と一緒に下に降りた。


リビングに入ると机を挟んで向かい合い座っている人影が二つ。一人は真理恵さん。もう一人は


『…げっ』
真「ナノハちゃん!こんなカッコイイお友達がいたのね!」
「出会い頭早々その言葉は失礼じゃないかい?」
バ「誰?この人」


真理恵さんは席を立ってこちらに座るよう施す。仕方なく座ると真理恵さんはそのまま台所に移動して私とバン君のお茶を持ってきて、置いたら「ごゆっくり」と言葉を残して立ち退いた。


バ「で、誰この人」


隣に座っているバン君はさっきと同じ質問を繰り返す。心なしか機嫌が悪いように見えるんですけど。何故?


『えーと、この人はですね、私がお世話になっているマメさんと言う方の息子さんであだ名はJr.(ジュニア)です』
隼「キミは何回言えば分かるんだ?僕の隼人と言う名前があるんだよ」
『うるさいJr.。ナルシめ』
隼「ふ。まあ、僕を羨む気持ちは分からんでもない」
バ「頭大丈夫?」
『…僻みが通じないナルシストだから。』


休みの日にこの人に会うなんて思ってもいなかったよ。なにしに来たんだコイツ。それ以前に、


『何で住所知ってんだ』
隼「なにを聞くかと思えば、そんなの調べたに決まっているだろう」
『犯罪ですよ』


プライバシーの侵害だ!しかも自分が悪いことしたと思ってない。バン君なんて既に彼を哀れむような顔してるし。


隼「今日、ここに訪れたのには訳があってな」
バ「ろくなことじゃない気がする…」


それは私もだよ、バン君。こういう人って大概変なこといいだすんだよね。正直聞きたくないよ。今すぐ追い出したい気持ちだよ。


隼「実は、近いウチにお見合いをすることになってな」
『それはおめでとうございます』
隼「話を最後まで聞け。僕はお見合いしたくないんだ」
「『はあ、(どうでもいい…)』」
隼「そこで、だ。


君に恋人役を頼みたい」


……………はい?


『え?今なんて?』
隼「だから、恋人だ。お見合い相手に諦めてもらうために」
『…なんで私?私より可愛い子なんていっぱいいるでしょ』


特にあんたなんて。
そう付け足すと彼は大袈裟にため息ついてきた。…ため息つきたいのはこっちだよ。


隼「なにも分かっていないな。いいか?仮に可愛い子を連れて行ったとしよう。さて、君はそれをみてどう思う?」
『…かわいい子連れてるな〜、と』
隼「違うな。皆はこう思う。“こんなかわいい子は絶対身体だけの関係だな”と」
『思わねーよ!』


お前だけだよ、そんなこと考えるのは!思わず机を叩いて身を乗り出した。


隼「だから君みたいに平凡で、お世辞でも大きいとは言えない胸の大きさの子を連れて行った方が愛を感じるだろう?」
『失礼すぎるとは思わないのか』
隼「みる限り、Bぐらいか?いや、A…」
『言うなぁああ!!』


なんなんだコイツ!しかも、当たってるし!ええ、胸ないですよ!だからなんだ!いっとくけど胸あっても邪魔なだけなんだから!


隼「そう喚くな。逆に感謝しろ。こんなかっこいい男と並んで歩けるなんてそうない。自慢できるぞ。」
『黙れナルシ。ちょっと顔がいいからって調子のるな』
隼「顔がいいのは自負している」
『もうやだこの人』


面倒くさいにもほどがある。いっそのこと了解して早く帰って貰おうか。恋人って言ってもその時だけだし、隣いるだけだし。


『もう、恋人でもなんでもやるので…』
バ「ダメだ」


覆い被せられた言葉にドキリとした。
横を見るとJr.を真っ直ぐ見据えているバン君の姿が。


隼「…何故だ?」
バ「ナノハはダメだ。他の人に頼んで」
隼「答えになってない。僕は何故ダメなのかと聞いている」
『ちょ、ちょっと…』


何だこの展開は。ついていけない。
なかなか口を開かないバン君に隼人は追い討ちをかけるように言った。


隼「それなりの理由がなければ僕が彼女を誘っていけない理由はない。 …はっきり言わないといつか捕られるぞ」
バ「……っ!」


Jr.はちらりと此方に目を向けてニヤリと笑った。


隼「なあ、ナノハ?」
『…ごめん。なんの話か検討がつかない』
隼「お前はつくづく鈍感だな」


そういいながら私の額にデコピンを食らわす。痛いと額を押さえれば彼はカラカラと笑って席をたった。


『帰るんですか?』
隼「断られた以上、ここにいる理由ないからな。なんだ、寂しいか?」
『いや、全然』


もう一発デコピンをしてから彼は家を出て行った。相変わらず嵐のような人だな。額を押さえてそう思いながらリビングに戻ると、さっきから一歩も動かず座っているバン君の姿が目に入った。


『バン君?どうしたの?』


彼の前でしゃがみこんで顔を覗きこむと彼はびっくりしたように顔をあげた。


「…あ…、なんでもないよ。俺、部屋戻るわ」


素早く立ち上がって部屋を出て行くバン君に私はただただ見ていることしかできない。


『バン、君…?』


Jr.と話してから様子が変だ。あの会話の中に考え込むような話あったかな…。





********************


夜。バン君が部屋から出てきたのはご飯のときだけ、それ以外はずっと部屋に籠もりっぱなしだった。


風呂上がり、真理恵さんにバン君にお風呂行くよう言って欲しいと言われた。軽い気持ちで、はい。と答えたが今考えればこれはバン君から悩みを聞き出すチャンスじゃないのか。お風呂のことのついでに聞く。
うん。完璧。



コンコン、と扉を叩くとバン君から返事が返ってきた。扉を開けてはくれない。


『バン君、お風呂入ってだって』
「分かったー」
『………』


返事をするだけで扉をあける気配は全くない。
………しゅーりょー。
その言葉と共にコングが脳内で鳴り響きそうになったが、こんなことでくじける私ではない
ぐっとドアノブに手を掛け、扉を開けようとした。が、


『鍵がかかってる!』


なんてこったい!これは予想してなかった。どんだけ用意周到なの。
ところがどっこい。私は怯まずガチャガチャと何回もドアノブで音をたてる。開け〜、開け〜。


数秒後、向こうが観念して扉があけられた。目の前には呆れた顔のバン君が。


「うるさい。」
『開けないバン君が悪い』


するすると何事もなく部屋に入ってベッドに腰を下ろすと彼は溜め息をついた。

「俺のベットだけど」


そういいながら私の隣に腰を下ろすバン君に微笑む。でもすぐ本題を思い出して顔を引き締めた。


『なにを悩んでいるの?』


バン君の肩が小さく揺れる。


「…なんでもないよ」
『嘘だよ』


彼は驚いた顔を此方に向けた。私をじっと見つめる。


『Jr.と話してから変だよ。教えて。君はなにを考えているの』


独りで悩まないで。


トン、と彼の胸に顔を埋める。大胆なことしてるなとまるで他人ごとみたいに考えた。


ゆっくりと頭を離す。そして相手の様子を伺った。


「〜〜〜〜〜っ!ほんっと、適わない……ッ」


手で顔を押さえながら半ば叫ぶバン君に首を傾げる。彼はそんな私をちらりと見てからポツポツと話始めた。


「…アイツが言ってただろ?いつか捕られるぞって。」
『ん?ああ、言ってたような…』
「その言葉がグサッときてさ。…怖くなったんだ」
『なんで?』
「ナノハが…」


そこまで言って口を閉ざした。
顔を下に向けて表情が分からない。私がなんだ。凄い気になるんですけど。

不意に顔が上がって視線が交わった。とても真剣な表情に息を呑む。


『バン君…?』
「…ナノハが、他の人に捕られるんじゃないかって」


『……え?』
「ナノハ、」





















「好きだよ。」











―――――――――――


やっとこさ一部完結しそうです。








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