オレンジデイズ

□実力はいかほどか。
1ページ/1ページ




ア「へぇ!すごいわね!」
カ「遂にナノハもLBXデビューか!」


キタジマに入るとすでにアミちゃんとカズ君が待っていた。LBXを意気揚々と見せると二人とも顔を綻ばせる。


この世界の人たちは他の人のことを自分のことのように喜んでくれる。そこまで喜ばれると照れるぜ!


『うん!早く動かしたい!』
バ「じゃあ、CCMの電源つけようか」
『了解!』


ビシッと親指を立ててCCMを開く。
うわー、私今CCM触ってるよ。ずっと憧れてたLBXを動かせるよ。


『点けたよ!』
ア「そうしたらこの順番に打ってみて」

アミに言われたとおりにキーを打つ。
オーディーンの目が光った。


『も、もう動かせる?』
カ「やってみな?」
バ「こことここのボタンを使うんだよ。」
『こう?』


恐る恐るボタンを押すとオーディーンが前に足を出した。
なるほど。こうやって動いていたのか。

最初はぎこちない動きだったが次第に慣れてきて、数分後には走ることができるようになった。


ア「そうそう!ナノハ、巧いね」
『ホント?』
ア「うん。じゃあ、次は攻撃を――…」




********************



















ア「今日は楽しかったよ。またバトルしようね!」
『うん!今度バトルするときは、負けない!』


今日一日で結構成長したと思う。やっぱり教えてくれる人がいいからかな?

アミちゃんとカズ君が歩いていくのを見てから、私とバン君も彼女たちとは反対方向に歩き出した。


バ「楽しかった?」


顔は歩く方を向いたまま、彼は私にそう尋ねた。反射的に頷くと彼は流し目でこちらを見て「そっか」と呟く。


そこから会話が発展することがなく、お互い無言で歩いた。もともと私は静かな空間は好きじゃない。しかし、今のこの静さは嫌じゃなかった。春風が頬を撫でて心地よい。そういえば、この前河川敷を通ったとき桜が大半はまだ蕾だったが咲いていた。

私がこの世界に来て、もう1ヶ月が経とうとしている。私の世界はどうなっているのだろう。友達は元気だろうか。なんだか寂しくなってきた。


「どうした?」


不意に聞こえてきた声にドキリとした。慌てて横をみるとバン君が眉を少し寄せてこちらを見ている。


『え、なにが?』
「なんか、寂しそうな顔してる気がしたから」


彼の言葉に目を瞬く。

…なんで、わかったの

そう言いたかったが呑み込んで顔を伏せた。バン君はそれを肯定と受け取って、言葉を紡ぐ。


「帰りたい?」
『え?』
「ナノハの世界に」


顔を上げて彼を見る。またもやビンゴ。なんで私が元の世界のこと考えていることが分かったんだ。私ってそんなに分かり易いの?


『…分からない。帰りたいのかな』


残してきた友達や家族には会いたいと思う。でも、


『バン君たちと離れたくない』


私にとってこの世界は夢のまた夢の世界だった。それが今現実となって私はこの世界に存在している。夢じゃない。だって痛覚を感じるんだから。




グイッと腕を引かれた。突然のことにされるがままで我に返った時には彼の腕の中にいて。
え、私今、抱きしめられてる?
声にならない叫びが上がった。身体は一瞬で熱を帯びる。
なんだこれ、なんだこれ。頭はショート寸前。てか既にショートしてる。


「俺も……」


耳元で囁かれる呟きに肩がビクリと跳ねる。


「俺も、離れたくない」


その言葉に息を呑んだ。胸が締め付けられたみたいに苦しい。
どうして、そんなこと言うの。私、期待しちゃうよ?
ゆっくりとバン君の背中にしがみつく。 今度はバン君の肩が跳ねたので慌てて手を離すとさっきよりもきつく抱きしめられた。




どれくらい抱きしめあってたのだろうか。バン君は静かに私を離すと「…ごめん。帰ろうか」と謝ってから歩き出した。


なんで謝るの?

なんで抱きしめたの?

聞きたいことがあったけど言葉に出来なかった。口を開いては閉じるを繰り返す。少し前を歩く彼が恨めしく思えた。
私だけいつも彼の言葉、行動に動揺させられている。それは自分が彼に好意を持っているからだけど…。
どうやったら意識してくれるんだろう。少しだけでいい。一瞬でもいいから私を見てくれないものか。


首を捻って考えて思いついたものも、それを行動に移していいのか悩んだ。
それでもやってみたい気持ちが勝って、彼に向かって小走りする。

バン君がやってきたのと同じような感じだし、おあいこだよね。

そう自分に言い聞かせて。


目の前の人の手を握って止まる。
驚いて振り返ったバン君に私がどぎまぎしてしまって、口を開くもとてもぎこちなくなってしまった。


『えっと、あの…家、帰るまで』


ダメかな…?と首を傾げる。手を払われるんじゃないかとドキドキした。
やっぱやるんじゃなかったと後悔してると彼は私の手を握り返した。


「――喜んで。」



はにかみながらそう言って、なかなか動かない私に「ほら 、行くよ」と顔を逸らして歩き出す。


二人だけの帰り道。沈みかけの夕日が二人の影をのばす。
周りからみたら私たち恋人同士に見えるのかな。など影を見ながら考えて微笑んだ。




あれ?バン君に意識してもらおうと思ったのに


…――まぁ、いっか。






―――――――――――




うわぁぁああ!

早く、くっつけたいよぉおお!!(゜∇゜)







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ