オレンジデイズ
□今日の運勢は大吉かもしれない。
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チュンチュン、とまるで漫画のような鳥の鳴き声で目を覚ましました。時刻は午前9時。ヤバい!遅刻だ!
ガバッと布団から飛び起きたがすぐに肩を落とした。
『…違うわ。今日休みだ…』
そう呟いてまた布団にダイブした。あれ?そう言えば私昨日布団に入ったっけ?
記憶を探るが全然思いつかない。代わりに思い出したのが昨日の出来事。
謝らないと、バン君は怒ってないだろうか。やっぱり昨日のうちに謝っておいた方が良かったと後悔。
取り敢えず朝ご飯食べてこよう。そう思い重たい腰を浮かし、着替えてから部屋を出た。
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下に降りると懐かしい人がおりました。
『あれ?淳一郎さん久しぶりです。おはようございます』
「おはよう。仕事が落ち着いたからね。朝方に帰ってきたんだ」
こっちの生活には慣れたかい?
コーヒーカップを口元に持っていきながら問いかける淳一郎さんに『はい、とても』と笑顔で返した。その言葉に淳一郎さんは微笑む。
私も朝ご飯と席につくと淳一郎さんは思い出したように席を立ち、私を手招きした。今座ったばっかりなんですけど。なんて文句がいえる訳なく大人しくそばに行くと淳一郎さんの手には一つのスーツケース。それを机に置いて私にあけて見ろと言った。
『…わあ!』
言われたとおりに開けてみて思わず声があがった。あげずにはいられないですよ。だって中には私の憧れの
『オーディーン!』
が入ってたんですから。ご丁寧にCCMもオーディーンの横に綺麗に並べられている。
「バンからオーディーンが好きと聞いてね。私からのプレゼントだ」
『え!?私が貰っていいんですか!』
「むしろ使ってくれなければ困る」
『おお…』
恐る恐るオーディーンを手にとる。夢みたいだ。いや、もしやこれは夢なのでは?ほっぺを摘んだが痛かった。
「前回のと姿形違いはないが、今までの技術を詰め込んだ最新型だ。操作に慣れればオーディーンmk2、アキレスD9ともやり合えるだろう」
『マジすか』
そんなすごい物を私が使って大丈夫なのだろうか。初心者の中の初心者の私が。
私が考えていることが分かったの淳一郎さんは安心させるように微笑んだ。
「操作方法はバンに教えてもらうといい。」
『え、あ、バン君は?』
「まだ降りてきてないわよ」
今まで黙っていた真理恵さんがそのまま続けて言う。
「ついでに起こしてきてくれないかしら」
どうせ見せに行くんでしょう?と首を傾げる真理恵さん。そこで思い立った。これは昨日のことを謝るチャンスなのでは!さりげなく謝れそう。行ける!
ガッツポーズすると真理恵さんも同じように私に向かってガッツポーズした。あ、そうか。真理恵さんは昨日の事件見てたんだった。
不思議そうに真理恵さんに話しかける淳一郎を置いて、二階に駆け上がった。
『バン君、おはよう!!』
バァンッ!と効果音が似合う勢いで扉を開ける。大丈夫、壊れていませんよ。これが私の平常運転なんです!
でも、これが失敗でした。
「あ、」
目の前には上半身裸のバン君の姿が。ちょうど今脱いだのだろうか腕にまだ服がからまったまま。
お互い固まって見つめ合う。
『……、ごごごごめんなさいっ!!』
先に動いたのは私。ドアを素早く閉めた。そしてドアを背にしてへたり込む。
『(し、心臓破裂するっ……)』
バクバクと鳴り響く胸を押さえる。だが、一度なり始めた心音はなかなか静まらない。あんなもん見せられたらあかんわ。心臓に悪すぎる。引き締まった体、無駄じゃないほどの筋肉。あれに抱かれたりなんかしたら…ダメだ!!私ホント萌え死ぬ!!
あああ……と奇声をあげているとドアが開いた。もたれていたため倒れそうになる。
「ナノハ?って、危ない!」
とっさにしゃがんで私を支えるバン君。
『ご、ごめんね?』
「ホントだよ」
『う……』
昨日から失敗ばっかりだな。ため息をついているとグッと持ち上げられて立たされた。突然のことに声があがる。
『どこからこんな力が…』
「俺だって男ですから」
振り向きながら言うとバン君は「カズにはかなわないけどね」と続けて苦笑い。確かにカズ君はムッキムキだからなぁ。それよりバン君の服装が気になった。少し後ろに下がって全体を見る。薄い青のラインが入ったブラウスにジーパン。袖は七分袖までめくられている。いかにも春らしい格好だ。
『かっこいい……』
そう呟くとバン君は目を丸くして私を見た。
ダテメガネとか似合うんじゃないかなと大きく開かれた目を覗いていると不意にバン君は顔を逸らして呟いた。
「……格好良いのは服だけ?」
うん?彼はなにを言っているんだ?
『なに言ってんの!着る人が格好いいから良く見えるの!』
「っ、」
『もっと自分に自信を持ちなさい!私だってトリップする前、どれだけバン君を嫁にしたいと思ったか!!』
「……嫁?」
胸を張っていいのけるとバン君は溜め息をついた。
「ところでわざわざ起こしにきたの?」
『…違う!これを見せたくてな!』
私自身、当初の目的を忘れていた。慌ててオーディーンを見せる。
「おお、懐かしい!」
バン君はそれを受けとると嬉しそうに笑った。その笑顔にキュン。ま、眩しいぜ…。
『淳一郎さんに貰った!』
「父さんから?帰ってきたの?」
『うん。それで操作とかはバン君に聞きなさいって言われて』
「なるほど。じゃあキタジマでも行くか」
『マジ!?』
「アミたちも呼べば来てくれると思う」
バン君はCCMを取り出してメールを送った。なんかバン君ってなにやってもさまになるんだな。じっと見つめていたらなに?と首を傾げられた。
『なんでもない!それより早くご飯食べよう!そしてキタジマへLet's go!』
LBXを動かせるという嬉しさに舞い上がる。軽い足取りで階段を降りていたがあることに気がついて足を止めた。後ろについていたバン君も足をとめる。
「どうしたの?」
『昨日はごめんね』
「ん?」
『あの、手、払っちゃって…』
振り向いてぎこちなく謝るとバン君は「ああ」と思い出したように呟いた。
「別に気にしてない」
『ホントに?』
「うん。……どっちかと言えば俺の方が謝らないといけないかも…」
『え?なに?』
最後の方、よく聞こえなくて聞き返したがバン君は「何でもない」と顔を背けた。少々気になったがそれ以上に気まずくならなかったこととオーディーンを使えるという嬉しさが勝ってそれ以上問いつめることなく階段を降り始めた。
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私だってLBXやりたい。
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