オレンジデイズ

□今度こそ仲良くなりましょう。
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「ただいま〜…ん?」


目の前の光景に目を傾げる?あれ、この家ってこんなに靴あったっけ。しかも随分といろいろな種類の。大小さまざまだし。
リビングに入った瞬間、カバンが肩からずり落ちた。


真「おかえりなさい。」
『こ、これは一体…』
バ「母さん、おかわりだって」


皿を片手に持ちながら私に気づいたバン君は「おかえり。」と笑った。最近、バン君が笑うことが多くなった気がする。その表情にきゅんとする私。実に単純だ。


『なんで、こんな大所帯に』


私の目線の先には、アミちゃん、カズ君、ジン君、ユウヤ君、ヒロ君、ランちゃん、アスカちゃん、みんながそれぞれソファーに座ってカレーを食べている。うわー、思い出した。私この光景、テレビで見たことあるわ。ジェシカがいないことが悔やまれる。


バ「なんでだろう?」


分かんないんかい。あれかな、集まるときはバン君の家って無意識のうちに決まってるのかな?一人納得していると、バン君の後ろからジン君が出てきた。出てきたって言うか歩いてきたことに気づかなくてそう見えただけなんだけど。


ジ「海道ジンです」


『あ、天草ナノハです。先日はごめんなさい(空気扱いにしてしまって)』


こんなこと考えているとは知る由もなく、ジン君は首を傾げる。ごめんなさい。なんでもないです。


ジ「そういえばナノハさんって、丸店(店の名前)で働いてる?」
『うん。よく知ってるね?』
ジ「やっぱり。あそこの道よく通るんだ」
『へぇ!寄ってくれればいいのに』
ジ「じゃあ、今度から立ち寄らせてもらうね」
ユ「ねえ、それ僕も行ってもいいかな?」


横からの声にそちらに目を向ける。そこには笑顔で自分に指を指しているユウヤ君の姿があった。


『いいよいいよ〜。おいしいものを食べさしてしんぜよう!』
「ホントに!?僕うどん食べるの初めてだよ!」


まじかよ。そりゃより一層おいしいうどんをこねねばいかん。燃えてきた!
そんなこと考えていると後ろから腕を引かれる。なんだなんだと思い後ろをみた。


バ「ナノハ、カレー食べないの?」
『あ、うん…食べる!』


少し不機嫌に見えるのは気のせいかな?真理恵さんからカレーを受け取りバン君に誘導されるままソファーに座った。カレーおいしそうだなぁ!
「いただきます!」と手を合わせてからスプーンですくったカレーを一口頬張る。めちゃくちゃ上手い。
それを見て微笑んでからバンもカレーを食べた。


その光景を見て面白くないと思う人物が一人。


ラ「(なにあれ!?なんで隣に座ってんの!?私だって座りたいのに!!)」


ゴゴゴゴゴ…と火花を散らしながらナノハを睨むランにアミは苦笑い。バンも大変ね。と一人呟いた。


『ッ!!?』


な、なんかものすごい悪寒がっ……
きょろきょろと周囲を見渡すとこちらを睨みつけてるランちゃんと目が合ってしまった。すごい睨まれてる、すごい睨まれてるっ!!
顔を青くして小さく震えているとバン君が心配そうな顔して私に手を伸ばした。
ダメだ!今バン君に触られたりしたら殺されるッ…!


気付いたら彼の手を払っていた。部屋にパシンと音が響く。目の前には目をまん丸くしたバン君の姿。


『う、あ…ご、ごめん……』
バ「……。」


黙ったまま払いのけられた自分の手を見つめてるバン君。私はやりきれなくなって席を立った。「ごちそうさま!」と真理恵さんに皿を渡して二階に駆け上がる。自分の部屋に入った瞬間ひざから崩れ落ちた。


『…やっちゃった……』


自滅した。完璧に気まずくなった。だってランちゃんの目が怖かったんだ。ランちゃんがバン君の好意を抱いていることはキタジマですぐにわかった。そりゃ突然バンの隣とられたら私でも嫌な気持ちになるよ。しかもランちゃん単純だから。負けないからってきっとバンは譲らないからとかそういう意味なんだよね。無理だよ。私勝てないよ。ホントはいい子なんだろうけど今は怖いよランちゃん。

『うわぁ…、明日からどうすれば…』


頭を抱える。答えがでることはなく時間だけが過ぎていった。



********************



コンコン、と扉を叩くが返事なく。俺はその場に立ち尽くしていた。時刻は午後9時。ナノハが二階に逃げて行ってからみんな、なんとも言い難い空気になって取りあえず解散することになった。アミに「次会った時、お互い気まずかったら承知しないから」と釘さされた。笑顔なのに怖かった。
俺だって気まずいのは嫌だ。でも、なんて言えばいいんだ?さっきはごめん?

なんで俺が謝るんだ。


そんなこと考えていたらこんな時間になっていた。
結局なんも思いついてない。もうなるようにやれ!半分意地になった。


「(…寝ちゃったのかな)」


自分の部屋に戻ってもよかったのだが、なんでかそんな気になれなかった。一応声をかけてからドアノブをひねる。


ベットに寝ている姿が………ない。
一瞬焦った。もしかして嫌気がさしてどこかに行っちゃったんじゃないかと。でもすぐ杞憂に終わった。扉のすぐ近くで寝転がってるナノハを見つけたからだ。気付かず歩いていたら蹴っていた。良かった、歩かなくて。


取りあえずベットに運ばないと。もう春だが夜はやっぱり冷える。風邪でもこしらえ『ムニャ…もう食べれないぃ…』……やっぱ蹴ったろうか。


はあ、と溜め息をついて寝ているナノハを横から抱きかかえる。持ち上げたとき思ったより軽くて驚いた。女の子ってこんなに軽いんだ。


仮にも好きな子がこんな無防備に寝ていたら俺だって男なわけだから、変な気を起こしてしまう。だからベットに寝かせたら早急に去ろうと思っていた。
思っていたのに現実は上手くいかないもので……


『…バン君、…嫌いに、ならないで……』


驚いて動きが止まった。そして恐る恐るナノハの顔をみたが彼女の瞳は閉じられたままだ。


「(寝言…だよな?)」


ナノハの顔の前で手を振るが反応はない。ほっと息を吐いた。帰るつもりだったが気が変わった。ベットに腰を下ろして彼女の頬に手を添えた。柔らかい…。


「……好きだよ。」


嫌いになるはずがないのに。


頬に添えていた手で彼女の前髪をかきあげそこに唇を押し付けた。さすがに口にする勇気はない。


軽いリップ音を付けてから離す。やる前は何とも思わなかったのに今更になってすごい恥ずかしくなった。ヤバい、絶対顔真っ赤だ。目の前の彼女が目を覚ましていないのが唯一の救いだよ。


逃げるように部屋をあとにした。自室に入った瞬間、扉を背背もたれにして、頭を抱えながらずるずると崩れ落ちた。


「明日、どうしよう……」


彼女の顔を見れる気がしない。














―――――――――――


お互いに違う事で気まずくなるっていうね。
要は似たもの同士ってことですな( ̄∀ ̄)






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