オレンジデイズ
□山野夫婦は美男美女です。
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ピピピピピッ
部屋中に響く目覚まし音。私は手を伸ばし、それを止めた。
『(…あれ?なんか…)』
そこで違和感に気付いた。私の目覚ましってこんな音だった?それになんかいつもよりベッドが狭く感じるのは何故だろう。私はガバッと起き上がった。それと同時に隣からうめき声。
『……。』
え?これは夢でしょうか?こんなことあるわけないじゃないか。私は夢か確かめるために隣で寝てる人物のほっぺたを思い切り引っ張った。
「――ッ?!」
その人物は当然のように閉じていた目を開いて小さくかすれた声で痛い、と叫んだ。どうやら夢ではないようだ。
「…ぁ、れ…?」
少年と目が合う。
『…おはよーございます。』
放心状態の彼に声をかける。少年は我に返ったようにびくりと肩ゆらすと突然顔を青白くした。
「おかあさぁぁん!!!」
そう言ってベッドから飛び降りて行った彼の早いこと。私はどうすればいいのかと悩んでいたらまたもやスゴい勢いで部屋に入ってきて「ちょっときて!」と私の手を引っ張った。私はなすすべなく連れていかれた。
はい、皆さん。私は今、有頂天です。何でかって?
だって目の前にはあの山野夫妻、そして隣には山野バン、本人が座っておられるのだから。もう両手に花ならぬ三方に花状態ですよ。幸せすぎます。
「まずお名前を聞いていいかしら?」
『…は!天草菜花です。』
いけない。浮かれ過ぎてた。なんとか正気に戻って軽く自己紹介をした。
「ナノハちゃんね。質問しても大丈夫かしら?」
バン君のお母さん、真理恵さんがこの場の代表として話す。淳一郎さんの方はじっと私を見ている。…なんか照れますな。
『はい。…でもまず私の話しを聞いてくれますか』
私はまず私の世界のこと、多分トリップしてしまったということを話した。隠しておくのが面倒だったし、話したほうが今後楽だと思ったから。
「…つまり、あなたの世界ではこの世界はゲームやアニメだってこと?」
『簡単に言うとそうですね。信じてくれるんですか?』
私のことばを聞いて二人は顔を見合わせた。そして淳一郎さんが口を開く。
「信じがたい話だがキミが嘘ついているようには見えない。私達は信じるよ。」
『…あ、りがとう、ございます』
こんなに簡単に信じてくれるなんて思ってなかったから、言葉が詰まってしまった。
「ナノハちゃん、住むところはあるのかしら?」
『えっと…』
「ないならここに住まない?」
ブッと吹いた。吹いたのは私ではない。隣に座っているバンだ。
「か、母さん?!」
「いいじゃない、ねぇあなた?」
「ああ。いいんじゃないか。」
嫌なのか、バン?
腕を組み、首を傾げる淳一郎さんにバン君はビクリと肩を震わす。
「…嫌じゃ、ないです…」
あれ?言葉と表情が全くあってないよ?嫌だって顔に出てるよ。
真理恵さんはそれに気づいてないのか、はたまた分かっていて無視しているのか嬉しそうに両手を合わせた。
「決まりね!これから宜しくね、ナノハちゃん」
私の意見は?と思ったが住むところがないのは確かなので、お言葉に甘えさせて貰った。
「よろしくお願いします。」
こうして私の新しい生活は幕を開けました。
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