I Love You!


□八話
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レイナ/バン「はあ!!?」


二人の声は見事に重なった。やらないはなしよ〜!とケイトはレイナに見せつけるようにバンにウィンクする。ヒロはこれが修羅場!とばかりに興味津々でバンたちを見ている。ランに関してはなんとでもなれと感じだ。
ケイトはふふんっと楽しそうに笑いながらDキューブを地面に投げ、ジオラマを広げた。
どうしよう、ケイトは本気だ。レイナは直感的にそう思った。こんなことしてる暇はないのに、やらなければバンがケイトとデート…、それは嫌だ!!


レイナ「…分かった。その勝負、受けてたちます!」


レイナの言葉にケイトは


ケイト「…そうこなくっちゃ」


と面白そうに笑った。その笑い方に違和感を覚える。なんでかは分からない。でもなんか変だと思った。じっとケイトを見つめると彼女は「何だべ?」と首を傾げてきたので、ふるふると首を振ってなんでもないと意志を表した。


ケイト「ルールはアンミリデットでいい?」


ジェシカ「ケイト!」


ヒロ「?アンミリデットってなんですか?」


ラン「ヒロ、知らないの?」


ランの言葉にヒロは縮こまりながら「すみません…」と頭を掻いた。


バン「簡単にいうと、何でもありのルールだよ」


ヒロ「なんでも?」


バン「そう。どんなアイテム使ってもいいし、LBXを破壊してもなんも言われない。そういうルールなんだ」


へぇ、と感心しながらヒロは頷く。一方ジオラマを挟んでケイトと向かいあっているレイナは訝しげにケイトを見た。


レイナ「……アンミリデット?」


どうして、と尋ねると彼女はお互い本気でやりたいじゃない?と至極楽しそうに答えた。その横でジェシカはまた頭を抱えた。「ごめんなさいね、こういう人なの…」ため息混じりに言う彼女にレイナは苦笑いする。


レイナ「もう、なんでもいいです。早く終わらせよう。」


レイナはポケットからCCMを取り出し、ライトニングをジオラマの中へいれた。それをみてケイトも同じようにLBXを中に入れる。そして二体が向かいあう。


ケイト「行くよ、ケティ!」


ケイトのLBX《ケティ》は片手銃をライトニングに向けて構える。
ライトニングも素早くレイピアから片手銃《ライトニングガン》に持ち替え、相手に向けた。お互い動かない。張り詰めた空気があたりに充満した。バトル中の二人を除いた四人が思わずごくりと息を呑んだ。どれくらい時がたっただろうか。最初に動いたのはケティだ。ライトニングに向かって引き金を引く。正確な銃撃にライトニングは打ち返すことできずに横にそれた。そのまま走りだすライトニングをケティは追いかけるように打ち続ける。走りながらレイピアに持ち替えると銃撃をそれで弾きながら近づいた。相手の目の前で剣を振るう。ケティは後ろに飛び退き、足をつけた瞬間前屈みになり、全体重をかけてライトニングに突進した。その衝撃でライトニングが吹き飛び崖の外壁に押し付けられる。岩が崩れるけたたましい音が鳴り響き砂煙がまった。


レイナ「っ?!」


レイナは声にならない叫びをあげた。砂煙が消え、ライトニングの姿が現れる。なんとか立ち上がるライトニングだが腹部から電流が走り、膝をついた。レイナは目を見張って目の前の少女をみる。冷や汗が彼女の頬を伝った。…なんで、彼女が。
ケイトを見つめたまま動かないレイナを彼女の後ろで見守っていたバンは眉を寄せた。


ラン「ねぇ、レイナの様子、変だよ?」


ランも気になったのかバンに声をかける。バンが俺もだ、と頷いてレイナのもとへ歩み寄ろうとするとヒロが口を開いた。


ヒロ「…同じなんです」


バン「同じ?」


バンはヒロの言ってる意味が分からずヒロの方へ顔を向ける。ヒロも驚愕の表情でケイトを見ていて、そのまま話し続けた。


ヒロ「飛行機の中で戦った時にレイナさんは敵に向かってあれをやっていたんです」


バン「あれって…突進のこと?」


ヒロ「レイナさんはレイピアを思い切り突き出していましたが、足がついた瞬間前屈みになるところとかそっくりでした。」


ラン「ただ偶然似てるだけじゃないの?」


ヒロ「そうだといいんですが…ケティとライトニングが重なって見えたのでびっくりしちゃいました。レイナさんも僕と同じことおもったんじゃないでしょうか?」


ヒロは目線をケイトからレイナへと移す。
レイナはCCMで操作してライトニングを立ち上がらせながらもまだ驚きを隠せずにケイトに問いかけた。


レイナ「あなたは、一体……」


偶然、そう思っていたが考えれば考えるほどありえないと答えがでてしまう。なんせあれは似すぎてる。足がついたあとの動作、屈み方、すべてが一緒だった。まるでコピーしてるかのよう。
そこまで考えて大きく首を振った。だって私が飛行機で戦ったのは少し前のこと、知ってるとしてもそこにいたヒロだけだ。ヒロ自体見ていたか分からないが。だから、あり得ないのだ。なのに知っている。ということは――。


ケイト「考え事してる場合?」


気がついた時にはすでに遅く、ライトニングの目の前にケティがいて、胸めがけて引き金を引く。ライトニングはほとんど無意識にそれを避けたが完全には避けきれず腕に弾が直撃。あまりの弾の威力に腕は肩からちぎれ、あらぬ方向へ飛んでいき無惨に転がった。


レイナ「ライトニング!!」


ジェシカ「ケイト!やり過ぎよ!」


ジェシカが慌てて止めに入るがケイトはCCMから目をはなさない。


ケイト「アンリミテッドなんだから、本気でこない向こうが悪いんだよ!」


銃からハンマーに持ち替え、ライトニングにせまるケティ。ライトニングはおぼつかない足取りでそれを避けている。ライトニングも限界だろう。故障個所が多くてなかなか思うように動かない。


レイナ「(負けるわけにはいかない。…でもどうすればいい?)」


心の中で舌打ちをする。ケティの攻撃は止むことなく防戦一方だった。ついに限界がきてライトニングが膝から崩れ落ちた。腹部、足と電流が走り、立ちそうにない。


ケイト「終わりだ!!」


ケティはライトニングめがけて思い切りハンマーを振り下ろす。もうだめだ。レイナは目をつぶった。


しかし一向に爆発音は聞こえない。おそるおそる目を開けるとケティのハンマーを受け止めたエルシオンの姿があった。それに続いてペルセウスとミネルバがケティをはさむようにして攻撃を試みる。ケティはハンマーを離し後ろへ飛び退けた。


ヒロ「いくらなんでもやりすぎです!」


バン「悪いけどこれ以上は見ていられない。まだやるというなら――」


三人はCCMを構えてケイトと対峙する。その様子にケイトはため息をついてケティをジオラマから出した。


ケイト「…バンに言われちゃ、やめるしかないだわさ」


そして身を翻し歩き出した。


ジェシカ「どこ行くの!?」


ケイト「用は済んだから帰る」


背中ごしに手を振って去っていくケイト。バンを除いた二人はあまりのあっけなさにきょとんと目を瞬かせた。






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